※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
ドロレス・クレイボーン
(Dolores Claiborne)
作品データ
著者:スティーヴン・キング
ジャンル:心理スリラー
老女が警察署で語り続ける、ひとつの人生の話
舞台はメイン州リトル・トール・アイランド。65歳の未亡人ドロレス・クレイボーンが、雇い主ヴェラ・ドノヴァン殺害の疑いで警察に呼ばれ、延々と語り始めるところから物語は動く。
彼女は「ヴェラは殺していない」と言い切る一方で、30年前に夫ジョーを死なせたことは否定しない。独白の形で明かされるのは、暴力のある結婚、娘を守るための決断、支配的な雇い主との奇妙な共犯関係。これは犯行の謎よりも、なぜそこに至ったのかを掘り下げていく話。
ざっくり時系列
ドロレスがヴェラの屋敷で働き始める
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アルコール依存で暴力的な夫ジョーとの結婚生活が続く
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娘セレナへの性的虐待が発覚し、ドロレスが守ると誓う
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逃げる資金を盗まれ、追い詰められる
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ヴェラから「事故は女の味方」という示唆を受ける
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皆既日食の日、ジョーを井戸に落とす
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事故死として処理され、ドロレスは裁かれない
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年月が流れ、認知症のヴェラが階段から転落
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ヴェラ死亡、ドロレスに殺害容疑がかかる
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全てを語ることで、真実と向き合う
物語の主要人物
・ドロレス・クレイボーン
島に暮らす家政婦。供述という形で人生を語る
・ヴェラ・ドノヴァン
裕福で高圧的な雇い主。ドロレスと歪んだ信頼関係を結ぶ
・ジョー・セント・ジョージ
ドロレスの夫。暴力と支配で家庭を壊す
・セレナ・セント・ジョージ
ドロレスの娘。父からの被害で母とすれ違う
雇い主と家政婦、女同士の歪な同盟
ドロレスは若い頃からヴェラの家で働き続ける。要求は厳しく、言葉もきつい。でも、耐えられるのはドロレスくらいだった。
夫を事故で失ったヴェラと、暴力夫を抱えるドロレス。二人は似た傷を抱えながら、主従でも友人でもない関係を築いていく。ヴェラは支配し、ドロレスは耐え、時に反発する。その緊張感がずっと続く。
娘を守るための一線
家庭ではジョーの暴力が日常だった。ある夜、娘セレナが父に性的虐待を受けていることを知り、ドロレスは決定的な一線を越える覚悟を固める。
逃げようにも金はなく、助けもない。そんな時、ヴェラが何気なく口にした「事故は女の友になることがある」という言葉が、頭から離れなくなる。
日食の日、すべてが重なる
計画は皆既日食の日に実行される。空が暗くなり、世界が一瞬止まる中、ドロレスはジョーを干上がった井戸へ誘い込む。
落下は事故として処理され、ジョーは死ぬ。法的には裁かれないが、その出来事はドロレスの中に重く残り続ける。
最後に語られる真実
物語は現在に戻り、ヴェラの死の夜へ辿り着く。幻覚に怯え、階段から落ちたヴェラは苦しみながらドロレスに助けを求める。
ドロレスは終わらせる覚悟をするが、手を下す前にヴェラは息を引き取る。それでも疑いは残り、町の目は冷たい。
ドロレスは、汚名を晴らすためではなく、自分自身のために全てを語り終える。
この小説のポイント
・供述という形で進む、途切れない独白
・善悪よりも、選択の重さが中心にある
・暴力と支配が日常をどう歪めるかを描く
・女同士の連帯と残酷さが同時に存在する
たぶんこんな小説
怖さは幽霊じゃなくて現実そのもの。逃げ場のない生活の中で、どこまでが許されて、どこからが罪なのか、その境目をずっと突きつけてくる。読み終わると、ドロレスの声だけが頭に残って、しばらく静かになる一冊。

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