※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
真犯人はこの列車のなかにいる
著者:ベンジャミン・スティーヴンソン
ミステリー作家だらけの列車で、殺人が起きて全員怪しくなる話
駆け出しミステリー作家のアーネスト・カニンガムは、なぜか推理作家協会50周年イベントに招待され、豪華列車での3泊4日の旅に参加することになる。周囲は名の知れた作家ばかりで完全アウェー状態。ところが旅の途中で、その参加者の一人が殺されてしまう。密室に近い列車、逃げ場のない状況、容疑者は乗客全員。作家たちの知識とプライド、隠された事情が絡み合う中、事件は一度では終わらず、物語は「ミステリーそのもの」を巻き込みながら進んでいく。
ざっくり時系列
アーネストが推理作家協会のイベントに招待される
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豪華列車で作家たちと3泊4日の旅に出る
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参加者の一人が列車内で殺害される
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乗客全員が容疑者として疑われ始める
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作家や一般客の過去や秘密が少しずつ浮かび上がる
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さらなる殺人が起こり、疑惑が深まる
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事件の構造と真相が明らかになっていく
物語の主要人物
・アーネスト・カニンガム
駆け出しのミステリー作家。語り手として事件に巻き込まれる
・推理作家協会の作家たち
豪華列車の乗客。事件の被害者にも容疑者にもなる
・一般客の乗客
作家以外の参加者。それぞれ事情を抱えている
作家だらけの豪華列車、居心地の悪さから始まる旅
物語の序盤は、アーネストの居心地の悪さが前面に出る。周囲は実績のある作家ばかりで、自分だけが場違いに感じている。豪華列車という閉ざされた空間と、華やかなイベントの裏側に漂う緊張感が、早い段階から「何か起きそう」な空気を作っていく。
そして実際に殺人が起きることで、旅は一気に様相を変える。列車という逃げ場のない場所で、しかも全員がミステリーに詳しい人間。普通なら頼りになるはずの知識が、ここでは全員を怪しく見せる要素になっていく。
疑うことが前提になる世界
事件後、登場人物たちは互いに探り合いを始める。誰が何を知っているのか、どこまで演技なのか、そもそも語られていることは本当なのか。
アーネストは語り手として、自分自身の立場や思考も読者にさらしていくが、それすら信用しきれない感覚が続く。作家たちは推理の型や定石を知り尽くしているからこそ、行動一つひとつが計算に見えてくる。
そこに一般客の存在が加わり、事件は「作家同士の知的ゲーム」では終わらないものになっていく。
列車の終点で明らかになるもの
物語が進むにつれ、伏線や言葉の端々が少しずつ意味を持ち始める。何気ない描写や軽い冗談のような部分が、後から振り返ると違った顔を見せる構成になっている。
最終的に明かされる真相は、単に犯人を指し示すだけでなく、この物語そのものがどう組み立てられていたのかを理解させる形になっている。列車の旅が終わる頃、読者は「そういう見方だったのか」と一段視点をずらされる感覚を味わうことになる。
この小説のポイント
・列車という閉鎖空間を活かした連続殺人
・登場人物の多くがミステリー作家という仕掛け
・伏線が細かく、後から効いてくる構成
・語り手そのものも含めて疑わせる作り
たぶんこんな小説
軽快で皮肉の効いた語り口のまま、読者をどんどん疑心暗鬼にさせてくる感じ。ページを進めるほど「さっきのあれ、意味あったな」と思う瞬間が増えていく。ミステリーを読む楽しさと、ミステリーというジャンルを眺める面白さが、同時に転がっている一冊。

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