※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
セル
(Cell)
作品データ
著者:スティーヴン・キング
ジャンル:終末ホラー/サバイバル
携帯電話が鳴った瞬間、世界が壊れて父は息子を探しに行く話
売れないアーティストのクレイ・リデルが、人生初の大きな仕事をつかんだその日、世界は携帯電話一本で終わる。
謎の信号「パルス」を受け取った人々は、人間性を失い、凶暴な群れへと変貌する。文明は一気に崩壊。クレイは混乱の街から逃げ延びながら、ただ一つの目的――息子ジョニーを見つけるため、北へ向かう。
ざっくり時系列
ボストンでクレイが仕事の契約を結ぶ
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携帯電話に「パルス」が流れ、人々が暴徒化する
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クレイがトム、アリスと合流して郊外へ逃げる
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文明が崩壊し、ニューイングランドを北上する旅が始まる
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ガイテン・アカデミーでフォーナーの集団行動を目撃する
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フォーナーが進化し、群れと超能力を持ち始める
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群れの報復と命令で「カシュワク」へ向かわされる
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仲間が失われ、旅はより過酷になる
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カシュワクでフォーナーの大群と最終的に衝突する
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クレイが息子ジョニーと再会する
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父は希望と絶望の間で、最後の選択をする
物語の主要人物
・クレイトン・リデル
売れないグラフィックアーティスト。息子を探して終末世界を進む
・トーマス・マコート
中年の男性。崩壊初期からクレイと行動を共にする
・アリス・マクスウェル
15歳の少女。恐怖を押し込めながら旅に同行する
・ジョーダン
12歳の少年。フォーナーの変化を理論的に分析する
・ジョニー・リデル
クレイの息子。パルスの影響を受けた可能性がある
・レイ・ヒュージンガ
爆発物の知識を持つ男。決定的な役割を果たす
携帯電話が世界を終わらせる
「セル」は、怪物も呪いも出てこない。引き金は、誰もが持っている携帯電話。
パルスを聞いた瞬間、人は理性を失い、仲間を襲う存在になる。フォーナーと呼ばれる彼らは、ただ暴れるだけじゃなく、時間が経つにつれて集団化し、同じ夢を見て、同じ場所に集まり始める。
ここでの怖さは、「技術が人を壊す」というより、「もう戻れない」という感覚そのもの。
北へ向かうロードムービー
物語の大半は、クレイたちが荒れ果てたニューイングランドを北上する旅。
途中で出会う生存者、疑心暗鬼、フォーナーの異様な行動パターン。ゾンビものっぽいけど、敵はどんどん賢くなっていく。
クレイの原動力は一貫していて、「息子が生きているかもしれない」という一点だけ。世界の再生とか人類の未来とか、そういう話は二の次。
群れは進化し、人は疑われる
ガイテン・アカデミー以降、フォーナーは「群れ」として動き始め、眠り、夢を共有し、命令を下す存在まで現れる。
一方、生き残った普通の人間たちも疑心暗鬼になり、「群れ殺し」と呼ばれる存在を恐れ、排除し始める。
文明が壊れた後、人が人をどう扱うかが、かなり露骨に描かれる。
カシュワクと、すべてを賭けた賭け
旅の終盤、クレイたちはカシュワクへ辿り着く。そこは一見、秩序が残っているようで、実際はフォーナーの巨大な罠だった。
爆弾、テレパシー、処刑の予告。
レイの選択と犠牲によって、一行は奇跡的に生き延びるが、全員が救われるわけじゃない。
父としての最後の選択
クレイはついにジョニーと再会する。でも息子は「汚染された」状態にある。
物語は、クレイがもう一度パルスを流し、息子の脳が再起動されることを願う場面で終わる。
それが救いなのか、絶望なのか、答えははっきり示されない。
この小説のポイント
・日常的な道具が世界崩壊の原因になる怖さ
・ゾンビ的存在が進化していく不気味さ
・終末世界でも、物語の軸は親子関係
・はっきりしないラストが、後に引く
たぶんこんな小説
派手な英雄譚じゃなくて、「もし今日スマホが鳴ったら」という嫌な想像を最後まで引っ張る話。希望はあるようで、確信はない。読み終わると、携帯電話を置いて、ちょっと静かになりたくなるタイプの一冊。

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