※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
ゴールデンボーイ
(Apt Pupil)
作品データ
著者:スティーヴン・キング
ジャンル:心理サスペンス/ドラマ
優等生の少年が、ナチス戦犯と出会って壊れていく話
1970年代の南カリフォルニア。成績優秀で将来有望だった少年トッド・ボウデンは、正体を隠して暮らす元ナチス戦犯と接触する。好奇心から始まった関係は、脅迫と共犯、そして殺人へと変質していく。少年と老人、どちらが先に壊れたのか分からないまま、日常は静かに崩れていく。
ざっくり時系列
1974年
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トッドがドイツ人移民アーサー・デンカーをナチス戦犯だと告発
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デンカーがクルト・デュサンダーであると認める
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トッドが戦争犯罪の話を聞くため脅迫を続ける
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トッドの成績が低下し、成績表を改ざん
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進路指導カウンセラーの面談をデュサンダーが偽装対応
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トッドが成績を回復し、デュサンダーを不要と考える
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トッドとデュサンダー双方が殺人を重ねる
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デュサンダーの正体が病院で露見
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デュサンダーが自殺
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トッドがフレンチを射殺し、銃乱射事件を起こして死亡
物語の主要人物
・トッド・ボウデン
成績優秀な高校生。物語の中心人物
・アーサー・デンカー/クルト・デュサンダー
正体を隠して暮らす元ナチス戦犯
・エド・フレンチ
トッドの進路指導カウンセラー
・モリス・ハイゼル
ホロコースト生存者の老人
・ワイスコフ
イスラエルのナチハンター
退屈な日常に現れた、危険すぎる秘密
物語は、トッドが近所に住む老人デンカーの正体を突き止めるところから始まる。彼はホロコーストに興味を持ち始めており、その好奇心を満たすため、デュサンダーの過去を暴く。通報という切り札を使い、少年は老人を完全に支配する立場に立つ。
支配と服従が逆転していく関係
トッドは話を聞くだけでは満足できず、デュサンダーにSSの制服を着せ、命令通りに行進させるまでになる。一方でトッド自身は悪夢に悩まされ、成績は低下し、日常生活が崩れていく。成績問題をきっかけに、今度はデュサンダーがトッドを脅迫する側に回り、二人の関係は歪んだ共犯関係へと変わっていく。
好奇心の先にあったのは、止まらない暴力
やがてトッドは、殺人が自分を落ち着かせることに気づき、ホームレスを殺害するようになる。デュサンダーもまた悪夢に追われ、同じように殺人に手を染めていく。互いに似た行動をとりながらも、その事実には気づかないまま、破滅は加速する。最終的にデュサンダーは正体を暴かれ自殺し、トッドは人を撃ち殺し、銃乱射事件を起こして命を落とす。
この小説のポイント
・超常現象なしで描かれる、極端に現実的な恐怖
・加害者と被害者の立場が崩れていく構造
・少年の好奇心が暴力へ変わる過程を細かく追っている
・キング作品の中でも特に重たい心理描写が中心
たぶんこんな小説
静かで息苦しい雰囲気がずっと続く話。怖さは派手な出来事よりも、人の内側が少しずつ壊れていく感じから来る。読み進めるほど、戻れないところまで来てしまった感覚が強くなる一編。

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