※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
人狼の四季
(Cycle of the Werewolf)
作品データ
著者:スティーヴン・キング
ジャンル:ホラー/中編小説
満月のたびに誰かが死ぬ町で、少年が怪物の正体に辿り着く話
メイン州の小さな町で、満月の夜ごとに起きる凄惨な事件。人々は正体不明の殺人鬼に怯え続けるが、その影で静かに観察していたのが、車椅子に乗った10歳の少年マーティだった。やがて彼は、自分を襲った怪物の特徴と町の異変を結びつけ、たった一人で決着をつける覚悟を固めていく。
ざっくり時系列
元旦、猛吹雪の中で鉄道員が殺される
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満月のたびに町の住民が次々と惨殺される
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7月、独立記念日の夜にマーティが狼男に襲われ、片目を潰す
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警察は人間の犯行と考え、狼男の存在を否定
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10月、ハロウィンの夜にマーティが怪物の正体に気づく
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匿名の手紙で正体を知る者がいると示す
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大晦日の満月、銀の弾丸で決着がつく
物語の主要人物
・マーティ・コスロー
車椅子に乗った10歳の少年。物語の主人公
・アルおじさん
マーティの母方の叔父。花火と銀の弾丸を用意する
・ナン・コスロー
マーティの母親。息子を特別扱いしすぎないようにしている
・ヘルマン・コスロー
マーティの父親。高校のコーチ
・レスター・ロウ牧師
町の牧師。物語後半で重要な存在になる
1年を刻むカレンダーが、死の記録になっていく
物語は1月から12月まで、1か月ごとの出来事として進んでいく。満月の夜になると必ず誰かが犠牲になり、事件は町の年中行事のように積み重なっていく。祝日や季節感と惨劇が並んで描かれることで、日常のすぐ隣に異常がある感覚がじわじわ広がっていく。
狼男に襲われた少年だけが、決定的な違和感を覚える
7月の独立記念日の夜、マーティは花火を楽しむ最中に狼男と遭遇し、爆竹で片目を潰すことに成功する。この体験によって、彼の中で恐怖は現実的な輪郭を持ち始める。一方で警察は事件を人間の犯行と決めつけ、マーティの証言を取り合わない。そのズレが、町の無力さをより強く浮かび上がらせる。
ハロウィンと満月が重なる夜、正体が一つに結びつく
秋、ハロウィンの夜に仮装して外を歩く中で、マーティは片目を失った人物を目撃する。それは町の牧師だった。匿名の手紙で追い詰められていく牧師と、静かに準備を進めるマーティ。大晦日の満月、狼男は再び少年の前に現れ、銀の弾丸によって物語は終わりを迎える。
この小説のポイント
・1年12か月という構造が、そのまま恐怖のリズムになっている
・子どもの視点で描かれるが、内容はかなり容赦がない
・怪物の正体よりも、町が気づけなかったことが強く残る
・イラスト付きで、絵本のような読み心地と残酷さが同居している
たぶんこんな小説
短いページ数なのに、季節が巡った記憶だけがしっかり残る。満月、祝日、雪、花火といった風景が、読み終わったあとも頭の中で静かに繰り返される。怖さと同時に、少し寂しさも残るタイプの一冊。

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