※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
デッドアイ・ディック
著者:カート・ヴォネガット
人生が一発の事故で決まってしまう話
子どもの頃のたった一発で「デッドアイ(命中屋)」というあだ名を背負わされ、そのまま一生を生きることになる男の話。
舞台は、いずれ中性子爆弾で消される運命にある街。
主人公ルディは、普通に生きようとするたびに過去と街の運命に引き戻され、気づけば「何もしてないのに人生が詰んでる感覚」を抱えたまま時間だけが流れていく。
淡々としてるのに、やけに刺さる。
ざっくり時系列
オハイオ州ミッドランド・シティで物語が始まる
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少年ルディがある事故を起こす
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「デッドアイ・ディック」という呼び名が定着する
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街と家族の中で居場所を失っていく
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大人になっても過去の出来事から逃れられない
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街が中性子爆弾で消される運命だと語られる
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ルディは人生と街の行く末を振り返る
物語の主要人物
- ルディ・ウォルツ
「デッドアイ・ディック」と呼ばれる主人公。過去の事故によって人生が大きく歪む - オットー・ウォルツ
ルディの父。街で知られた存在で、家族関係に影を落とす人物 - フェリシア
ルディと関わる女性。彼の人生の流れに影響を与える存在
取り返しのつかない一瞬がすべてを決める
ルディの人生は、少年時代のある出来事で決定的に変わる。
本人の悪意とは関係なく、たまたま起きた事故なのに、その結果だけが一人歩きしていく。
周囲は彼を「危ないやつ」として扱い、ルディ自身もその役割を引き受けるしかなくなる。
滅びが確定している街で生きるということ
ミッドランド・シティは、将来中性子爆弾で消されることが最初から示されている街。
住民たちはその事実をどこかで知りながら、知らないふりをして日常を続けている。
その空気の中で、ルディの人生もまた「どうせどうにもならないもの」として進んでいく。
笑えないのに笑ってしまう人生の記録
物語は重たい題材なのに、語り口は軽く、どこか間の抜けたユーモアが挟まれる。
ただ、その笑いは救いというより、「そうやってやり過ごすしかないよね」という諦めに近い。
ルディの人生は特別不幸というわけでもないのに、ずっと居心地が悪いまま続いていく。
この小説のポイント
・偶然とレッテルが人生を縛る構造
・滅びが確定している世界の静けさ
・ブラックユーモアの奥にある強烈な虚無感
・主人公が能動的に何かを変えないところ
たぶんこんな小説
派手な事件が連発するわけでもなく、盛り上がる展開も少なめ。
でも読み進めるほど、「何も起こらないまま人生が終わる怖さ」がじわじわ効いてくる。
笑いながら読めるのに、読み終わったあとに妙な静けさが残る、そんなタイプの一冊。

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