※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
チャンピオンたちの朝食
著者:カート・ヴォネガット・ジュニア
不遇な作家と成功者が交差して、世界の見え方がひっくり返る話
売れないSF作家キルゴア・トラウトと、表向きは大成功している実業家ドウェイン・フーバー。まったく違う場所を生きてきた二人が、ミッドランド・シティのアート・フェスティバルをきっかけに同じ時間と空間に放り込まれる。人生がうまくいっているように見える人間と、ずっと報われない人間。そのズレが重なった瞬間、世界が少し壊れた音を立て始める。
ざっくり時系列
キルゴア・トラウトが不遇な作家生活を送っている
↓
アート・フェスティバルの招待状が届く
↓
ミッドランド・シティへ向かう
↓
ドウェイン・フーバーの日常と内面が描かれる
↓
二人の人生が同じ場所で交差する
↓
世界の見え方が決定的に変わる出来事が起こる
物語の主要人物
・キルゴア・トラウト
不遇のSF作家。大量の作品を書き続けているが評価されていない
・ドウェイン・フーバー
地元では成功者として知られる実業家
・作者自身
物語の途中に姿を見せ、世界の説明役として関わってくる
招待状が運んできた、ありえない転機
キルゴア・トラウトは、ほとんど誰にも読まれない小説を書き続けてきた作家だ。そんな彼のもとに、突然アート・フェスティバルへの招待状が届く。理由もよくわからないまま、トラウトはミッドランド・シティへ向かう。ここから彼の人生は、本人の意思とは関係ない方向へ転がり始める。
成功者の内側で、静かに壊れていくもの
一方で描かれるのが、実業家ドウェイン・フーバーの日常だ。周囲から見れば成功者で、何不自由ない人生に見えるが、内側では少しずつ歯車がずれている。孤独や疑念が積み重なり、ある考えが彼の中で現実として強くなっていく。
世界は誰のために、どう作られているのか
物語の後半、トラウトの書いた一つの作品が、ドウェインの人生に決定的な影響を与える。そこから起こる出来事は、現実とフィクション、正気と狂気の境界を一気に曖昧にする。作者自身が語り手として前に出てきて、「この世界はどう作られているのか」を読者に直接投げかける形で、物語は収束していく。
この小説のポイント
文章だけでなく、作者自身のイラストや記号のような説明が物語に入り込み、読む側の感覚をずらしてくる構成が特徴的。物語を楽しませながら、人間の自由や思考、成功という言葉の正体を問い続けてくる。
たぶんこんな小説
めちゃくちゃで、ふざけているように見えるのに、なぜか胸の奥に刺さる一冊。笑いながら読んでいたはずが、途中で自分の世界の見え方を疑い始めてしまう。不思議な読後感が長く残る、そんな空気がずっと漂っている。

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