※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
スラップスティック
著者:カート・ヴォネガット
世界が物理的にも精神的にも崩壊する話
ある日突然、地球の重力が強くなり、追い打ちをかけるように緑死病という奇病が広がって世界は完全に混乱。
国家は機能を失い、アメリカは分裂、各地で自称の王や貴族が好き放題を始める。
そんな終末世界のど真ん中で、史上最後の合衆国大統領が、自分の人生とこの国の顛末を手記として書き残していく話。
バカバカしい出来事の連続なのに、読んでいると人間の寂しさや必死さがじわっと滲んでくる。
ざっくり時系列
地球の重力が突然強くなる
↓
緑死病が流行し、人口が激減する
↓
国家や社会の仕組みが崩壊する
↓
アメリカが事実上バラバラになる
↓
ミシガン国王やオクラホマ公爵などが現れる
↓
マンハッタンは廃墟とジャングルになる
↓
史上最後の大統領が回想録を書き始める
↓
人類の滑稽で必死な姿が語られていく
物語の主要人物
- 史上最後の合衆国大統領
崩壊した世界の中で、自身の人生と国家の終わりを記録する語り手 - ウィルバー・ダフォディル=イレーヌ・スワイン
大統領の兄妹。異常な才能と関係性を持つ人物 - ミシガン国王
国家崩壊後に地域を支配する存在の一人 - オクラホマ公爵
分裂した世界で権力を握る地方支配者
重力が変わっただけで文明が壊れる
物語の発端は、理由も説明もないまま地球の重力が強くなるという異変。
人は動けなくなり、建物は壊れ、社会は一気に機能しなくなる。
そこに緑死病が重なり、人口は減り、助け合う余裕もなくなっていく。
科学的な理屈よりも、「そうなったら人間はこうなるよね」という描写が容赦なく続く。
国が消えて、役職だけが暴走する
アメリカ合衆国はもはや一つの国ではなくなり、地域ごとに勝手な肩書きと支配者が生まれる。
王や公爵という名前は立派なのに、やっていることは場当たり的で幼稚。
それでも人々は肩書きにすがり、秩序っぽいものを信じようとする。
このあたりの描写が、笑えるのにやたら現実的。
大統領の手記として語られる終末喜劇
物語は、マンハッタンの廃墟で史上最後の大統領が手記を書く形で進んでいく。
彼自身の人生も、家族との関係も、国家の運命も、すべてがどこかズレていて滑稽。
でも、そのズレ方が極端だからこそ、「人間って結局こうだよな」という感覚が浮かび上がってくる。
この小説のポイント
・世界崩壊ものなのに徹底的にドタバタ
・科学的説明より人間観察がメイン
・権力や制度がいかに脆いかを笑いに変える
・バカバカしさと切なさが同時に来る構成
たぶんこんな小説
終末を描いているのに、どこか学芸会みたいな騒がしさがあって、読んでいると笑っていいのか戸惑う感じ。
登場人物たちは愚かで必死で、でもその必死さが妙に愛おしい。
読み終わる頃には、世界の終わりよりも「人間ってそういう生き物だよね」という気持ちのほうが強く残る一冊。

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