※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
ホーカス・ポーカス
著者:カート・ヴォネガット
戦争の掛け声が人生をめちゃくちゃにしていく話
主人公ハートキは、戦争中は兵士を鼓舞するために馬鹿げた演説「ホーカス・ポーカス」を叫び、戦後は大学教師になり、気づけば刑務所の教師にまで転落していく。愛国心、教育、経済破綻、戦争の後始末。全部がちぐはぐにつながりながら、彼の人生は何度も裏切られていく。笑えるくらい荒唐無稽なのに、振り返るとやたら現実に似ている話。
ざっくり時系列
ハートキが戦争中に兵士を鼓舞するスピーチを行う
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戦後、大学で教師として働く
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さまざまな理由で大学を追われる
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日本企業が経営する刑務所で教師になる
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刑務所で大規模な脱獄事件が発生する
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ハートキは自分の人生と国のあり方を振り返る
物語の主要人物
・ユージン・デブス・ハートキ
物語の主人公。元兵士であり、教師として波瀾万丈の人生を送る
・ハートキの家族
彼の人生に影を落とし続ける存在
・刑務所の囚人たち
社会の歪みをそのまま背負わされた人々
戦争が終わっても、終わらないものがある
戦争が終われば普通の生活に戻れる、という期待はあっさり裏切られる。ハートキは英雄でも成功者でもなく、ただ流され続ける。戦時中の言葉や行動は、終戦後も彼の人生にまとわりつき、評価や立場を決定づけてしまう。戦争は終わったはずなのに、その後遺症だけがずっと残り続ける。
教育も経済も、全部が信用できない
大学は理想の場ではなく、刑務所は更生の場でもない。さらに、国は破産寸前で、アメリカの資産は外国資本に買われていく。ハートキが身を置く場所は次々と崩れ、何を信じればいいのかわからなくなる。制度は立派でも、中にいる人間は誰も救われていない。
人生はホーカス・ポーカスみたいなもの
脱獄事件という大きな出来事を経て浮かび上がるのは、人生そのものが手品のようにいい加減で、説明不能だという感覚だ。意味があると思っていた選択は後から無意味に見え、どうでもいい出来事が決定打になる。ハートキはその混乱を、皮肉と諦めの混じった視線で見つめ続ける。
この小説のポイント
・戦争が個人の人生をどう壊すかを一貫して描いている
・教育や国家への期待を徹底的に外してくる視点
・笑える語り口と、笑えない現実の同居
・主人公が英雄にならないところ
たぶんこんな小説
人生にちゃんとした意味や筋書きを期待すると肩透かしを食らう。でも、その無茶苦茶さを受け入れると、不思議と気が楽になる。怒りも諦めも全部ひっくるめて、人間ってこうだよね、と肩をすくめてくる感じ。読んでいると苦笑いが止まらないけど、後からじわっと効いてくる一冊。

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