※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
宇宙の呼び声
(The Rolling Stones)
作品データ
著者:ロバート・A・ハインライン
ジャンル:SF
ルーニー一家が中古宇宙船で旅に出たら、商売と珍獣と大増殖で船内がカオスになる話
月の住人「ルーニー」のストーンズ一家は、中古の宇宙船を買って修復し、太陽系を観光する旅に出る。双子のカストルとポルックスは火星で中古自転車を仕入れて売ろうとして、規則違反で捕まるけど祖母ヘイゼルが助ける。さらに火星で「フラットキャット」を手に入れた結果、船の中がとんでもないことに。予定通り帰るどころか、小惑星帯の探鉱ブームに乗って商売を始め、最後は土星の環を見に行く方向へ進んでいく。
ざっくり時系列
ストーンズ一家が中古宇宙船を購入して修復する
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太陽系観光に出発する
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火星に滞在し、双子が中古自転車を買って転売を狙う
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規則違反で捕まるが祖母ヘイゼルが救出する
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火星で「フラットキャット」をペットとして購入する
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当初の帰国予定をやめ、小惑星帯へ行くことを決める
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小惑星帯の「核物質」と放射性鉱石の探鉱ブームに商売で乗ろうとする
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火星で物資や高級品を仕入れて目的地で売る
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船内で急速に成長し繁殖する生き物(妊娠している個体もいる)が爆発的に増える
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一家がそれらを冬眠させ、のちに鉱夫たちに売る
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いくつかの冒険の後、土星の環を見に出発する
物語の主要人物
・カストル・ストーン
ストーンズ家の双子の10代の少年の一人
・ポルックス・ストーン
ストーンズ家の双子の10代の少年の一人
・ヘイゼル・ストーン
ストーンズ家の祖母で、火星で双子を助ける
・バスター
ストーンズ家の兄で、双子からフラットキャットの話を受ける
・アンジェロ
火星の店主で、双子にフラットキャットを紹介する
火星で転売デビュー、そして祖母が最強すぎる
旅の最初の滞在地は火星。双子のカストルとポルックスは、そこで中古自転車を買って「向こうで売れば儲かるんじゃ?」と動き出す。ところが地元の規則に引っかかって捕まってしまい、ここで祖母ヘイゼルが登場して刑務所から救い出す。火星滞在中、双子はバスターに向けて、心地よい振動を発する火星の生き物「フラットキャット」をペットとして買う。かわいい話に見えるけど、この選択があとで船内の空気をガラッと変える。
帰国やめます、小惑星帯で商売します
当初は帰国する予定だったのに、一家は予定変更して小惑星帯へ向かうことを決める。そこは「ゴールドラッシュ」とも言える状況で、「核物質」と放射性鉱石の探鉱が行われている場所。双子は火星で物資や高級品を手に入れ、目的地で売る動きをする。鉱夫が一攫千金を掘り当てるというより、商人が強いんじゃないか、という信念で動くのが面白いところ。観光のはずが、いつの間にかリアルな商売旅になっていく。
フラットキャット大増殖と、秘密兵器の冬眠作戦
火星の店主アンジェロに紹介されて船へ連れてきたフラットキャットは、船内ですぐに子どもを産み、そこから一気に増えていく。子どもたちもまた増えて、ついには宇宙船がフラットキャットで溢れかえるレベルに。ストーンズ一家は、この問題を「集めて低温の貯蔵庫に入れて冬眠させる」という方法で処理する。後にそれらは蘇生され、小惑星帯の鉱夫たちに売られる。かわいい事件で終わらず、ちゃんと商売の流れに回収されていくのが、この話らしいところ。いくつかの冒険を経て、一家は土星の環を見に出発する。
この小説のポイント
・中古宇宙船を直して「観光」するはずが、どんどん実務と商売に寄っていく流れ
・火星での転売、規則違反、祖母ヘイゼルの救出で物語が勢いづくところ
・小惑星帯の探鉱ブームを「商人目線」で見て動く発想
・フラットキャットの急速な繁殖と、冬眠で封じて売り物にする解決の仕方
・作品外の話として、1905年の短編「豚は豚」から着想を得たという話や、後年のスタートレックのエピソードトリブルの災難との類似が話題になり、脚本家デイヴィッド・ジェロルド側が許可を求めた、という周辺エピソードがある点
たぶんこんな小説
家族旅行のワクワク感と、宇宙での生活の細かい段取りが同時に動いていく雰囲気。観光っぽい景色の話がありつつ、転売とか探鉱ブームとか、現実の手触りが混ざってくる。そこにフラットキャットの大増殖みたいな事件がドーンと入って、船の中が賑やかになっていく感じもある。読み終わったあと、太陽系を一周したみたいな気分が残るタイプ。

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