※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
ルナ・ゲートの彼方
(Tunnel In The Sky)
作品データ
著者:ロバート・A・ハインライン
ジャンル:青少年向けSF/サバイバル/開拓もの
置き去り試験が、いつの間にか建国イベントになってる話
上級サバイバル授業の最終試験で、ロッド・ウォーカーたちは「見知らぬ惑星で数日生き延びる」はずだった。ところが連絡が来ないまま日数が過ぎていき、ロッドはジャクリーン “ジャック” と組んだ瞬間に、全員が取り残されたと気づく。そこからは長期生存モードに切り替えて、仲間を集め、拠点を作り、町のルールと政府まで作っていく。でも政治のすれ違いと判断ミスが致命傷になり、居住地は崩壊。リーダーを引き継いだロッドは、孤立から約2年後に地球との接触が戻ったとき、今度は「大人扱いされない現実」に強烈なギャップを食らう。やがて彼は気持ちを整理し、数年後には正式な植民隊を率いる側へ進んでいく。
ざっくり時系列
未来の地球でテレポーテーション「ラムズボサム・ジャンプ」が発明され、植民が進む
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高校生ロッドが上級サバイバルクラスの最終試験に参加する
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ラムズボサムのポータルで惑星へ移動し、単独で行動を開始する
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2日目にロッドが泥棒に襲われ、意識を失い、装備を失う
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ロッドがジャクリーン “ジャック” と合流し、10日以上連絡がない異常に気づく
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取り残されたと悟り、長期生存のために生存者を集め、拠点づくりを始める
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コミュニティが約75人規模になり、政府を選ぶ必要が出てくる
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グラント・カウパーが市長に選ばれるが、方針をめぐって不安が積み上がる
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危険な立地のまま移転せず、先住民族の行動変化で居住地が壊滅、グラントが死亡する
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ロッドが新しい市長に選ばれ、立て直しに当たる
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約2年の孤立の後に地球との接触が回復し、救助される
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地球帰還後、ロッドは「主権国家の指導者」から「軽く扱われるティーン」へ戻るギャップに苦しむ
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教師(今は義理の兄)と妹の説得で気持ちを切り替える
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数年後、ロッドは正式な植民隊を率いる
物語の主要人物
・ロッド・ウォーカー
高校生。植民者になる夢を持ち、サバイバル試験で取り残された後、共同体の事実上のリーダーになる
・ジャクリーン “ジャック”・ドーデット
ロッドが協力する生徒。合流時に連絡断絶の異常を伝え、状況把握のきっかけになる
・グラント・カウパー
年上の大学生。政府が必要になった段階で市長に選ばれ、方針判断が共同体の行く先に影響する
・ロッドの姉
ロッドに装備の考え方を助言する。ロッドはナイフと基本装備で挑む判断につながる
・ロッドの教師
上級サバイバルクラスの担当。帰還後にロッドの気持ちに影響する説明をする
ラムズボサム・ジャンプと高コスト植民が、試験の前提を作ってる
舞台の未来では、人口過剰の圧がテレポーテーション技術「ラムズボサム・ジャンプ」で逃がされ、余剰人口は他の惑星へ向かう形になっている。ただしコストが高いから、植民地はすぐ地球と行き来できるわけじゃなく、双方向の貿易が成り立つまで孤立しやすい。
さらに、現代技術はインフラが要るから、入植者は維持しやすい技術を選ぶ流れもある。ここが効いてて、最終試験も「装備は持てる範囲だけ、あとは自力で生き延びろ」という設計になってる。ロッドは姉の助言で、狩猟用ナイフと基本装備に絞り、ハイテク兵器は避ける。最後の注意として全員が聞かされるのが「ストーボルに気をつけろ」。
泥棒で詰みかけて、ジャック合流で現実が見えて、町づくりが始まる
試験2日目、ロッドは泥棒に襲われて気絶し、目覚めたときには予備のナイフ以外ほとんど失っている。ここから一気に、サバイバルが「課題」じゃなく「生活」になる。必死すぎて時間感覚すら曖昧になっていく中で、別クラスのジャックと協力関係になる。
そして決定的なのが、ジャックから「10日以上連絡がない」と告げられるところ。試験は2日から10日の想定だったはずなのに、もうそれを超えている。二人はようやく、これは単なる最終試験じゃなく、取り残しだと悟る。
ここからは長期生存を前提に、他の生存者を集め、住める場所を作り、役割分担をしていく。ロッドは最終的に約75人規模まで広がる共同体の中心になっていく。
政治が回り始めた瞬間、判断ミスが連鎖して崩壊が来る
人が増えると、食料や安全だけじゃなく、意見の衝突が出てくる。「誰が決めるのか」を決めないと、次の一手が打てない。そこで政府を選ぶ流れになり、ロッドは政治や行政に興味が薄いから、年上で弁の立つグラント・カウパーが市長に選ばれたのを歓迎する。
ただ、グラントは話すのは得意でも、行動面の強さが別問題になっていく。ロッドは政策の多くに反対しつつも支え続けるが、重大な警告が無視される。ロッドは「今の居住地は危険で守りにくいから、見つけた洞窟群へ移るべき」と言うのに、受け入れられない。
そこへ追い打ちで、無害と見られていた先住民族が突然行動を変え、キャンプを襲撃する形になって居住地は壊滅、グラントは殺される。住民はロッドを新しい市長に選び、ロッドは立て直しを背負う側になる。
この小説のポイント
・サバイバル試験が、取り残しによって「共同体づくり」に変質していく流れ
・装備や技術が限られる環境で、生活の仕組みや統治の形まで組み上がっていくところ
・人が増えた瞬間に必要になる、ルール、役割、正当性、そして判断の重み
・地球との接触が戻ったときのカルチャーショックが、「成長の方向」を揺さぶる構図
・「ストーボル」の警告が、恐怖と警戒心を植え付ける仕掛けとして機能していたという種明かし
たぶんこんな小説
前半は、手持ちが削られていく感じのサバイバルの緊張がありつつ、途中から町づくりや政治の空気が濃くなっていく雰囲気がある。孤立の中で大人みたいに回してた日々が、地球側の常識が戻った瞬間にズレて見えてくる、そのギャップの苦さも残る感じ。サバイバル、開拓、自治、帰還後の揺れが一本につながってるっぽいよ。

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