※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
クロイツェル・ソナタ
(Крейцерова соната)
著者:レフ・トルストイ
嫉妬が思考を乗っ取って破滅まで一直線に進む話
列車の中で出会った男が、結婚、愛、欲望について語り始める。
理屈は冷静、言葉は過激、感情は制御不能。
その独白の行き着く先にあるのは、本人が「正しさ」だと信じ切ってしまった最悪の結末だった。
ざっくり時系列
列車内で結婚と愛をめぐる会話が交わされる
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ポズドニシェフが自分の結婚生活を語り始める
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情熱と衝突を繰り返す夫婦関係が続く
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妻と音楽家の親密さに強い疑念を抱く
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音楽と想像が嫉妬を加速させる
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思い込みのまま帰宅し、取り返しのつかない行動に出る
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事件後にようやく自分の行為を直視する
物語の主要人物
・ポズドニシェフ
語り手。結婚と欲望を激しく否定する男
・ポズドニシェフの妻
音楽を愛し、社交的な側面を持つ女性
・トゥルハチェフスキー
ヴァイオリニスト。妻と音楽を通じて関わる
列車の中で始まる危険な独白
物語は列車内の会話から始まる。
結婚は愛に基づくべきだという意見に対し、ポズドニシェフは「愛とは何か」を疑い始める。
この時点ですでに、彼の語りは一般論ではなく、強烈な個人体験へと傾いていく。
結婚生活という戦場
彼の結婚生活は、愛と憎しみが交互に訪れる日々だった。
情熱はあるが安定はなく、互いを理解していると思った瞬間に激しい衝突が起きる。
彼は次第に、男女関係そのものを「動物的な過剰」と捉えるようになる。
音楽が引き金になる
妻がヴァイオリニストとベートーヴェンのクロイツェル・ソナタを演奏する場面が、彼の心を決定的にかき乱す。
音楽は人の内面を変えてしまう、と彼は考え、疑念は確信へと変わっていく。
ここでは、事実よりも想像の方が圧倒的な力を持つ。
取り返しのつかない選択
理性を保っているつもりのまま、彼は最悪の行動に出る。
行為そのものよりも、その後に訪れる「理解の遅さ」が、この物語をさらに重くする。
彼は最後に、語り相手へ許しを求める。
この小説のポイント
・一人称で描かれる思考の暴走
・嫉妬が論理を装って正当化されていく過程
・音楽という美が破壊の象徴になる皮肉
・結婚と欲望をめぐる極端な思想の提示
たぶんこんな小説
読んでいる間ずっと、危うさが張りついてくる。
主人公の言葉は筋が通っているようで、どこか歪んでいる。
恋愛小説でも家庭小説でもなく、人の思考が壊れていく瞬間を間近で見せられる一冊。

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