※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
ユービック
(Ubik)
著者:フィリップ・K・ディック
現実が壊れていくたびにスプレーを噴く話
超能力と冷凍保存が当たり前になった未来で、技術者ジョー・チップは「現実が劣化していく」異常事態に巻き込まれる。
時間は逆行し、人は突然死に、世界は信用できなくなる。
そんな中、謎の製品ユービックだけが、壊れた現実を一瞬だけ元に戻す。
ざっくり時系列
超能力対策会社でジョー・チップが働く
↓
月面基地での任務に参加する
↓
爆発事故が起こり、グレン・ランシターが死亡する
↓
生き残ったはずの一行が現実の劣化を体験し始める
↓
世界が過去へと巻き戻っていく
↓
仲間たちが次々と衰弱して消えていく
↓
ユービックが現実を一時的に回復させると分かる
↓
自分たちがハーフライフ状態にある可能性に気づく
物語の主要人物
・ジョー・チップ
借金だらけの技術者。現実の異変に最後まで抗う
・グレン・ランシター
会社の創業者。生死の境界を越えて干渉してくる
・エラ・ランシター
ランシターの妻。ハーフライフ状態で重要な役割を持つ
・パット・コンリー
過去を書き換える能力を持つ新人
・ジョリー・ミラー
他者の半生を消費して生き延びる存在
爆発のあとに始まる違和感
月面基地での爆発事故を境に、世界は少しずつおかしくなる。
タバコや日用品は古び、時間は逆流し、現実は1930年代へと後退していく。
誰が生きていて、誰が死んでいるのか、その前提すら崩れ始める。
ハーフライフという中途半端な生
死者の意識を保存するハーフライフ技術によって、登場人物たちは「生きても死んでもいない」状態に置かれている可能性が浮かび上がる。
現実そのものが、誰かの意識によって作られているかもしれない、という疑念が強まっていく。
ユービックという救いと謎
ユービックは、スプレー缶や日用品として現れ、劣化した世界を一時的に正常化する。
しかし、その正体も出所も分からない。
救いであると同時に、さらに不安を深める存在として機能する。
この小説のポイント
・現実と幻覚の境界が最後まで確定しない
・死後も続く意識という不安な発想
・商品広告形式で挟まれる章構成
・「生きているとは何か」を徹底的に揺さぶる
たぶんこんな小説
読み進めるほど、足元が崩れていく感覚になる。
理解したと思った瞬間に、前提がひっくり返る。
SFの形を借りた悪夢みたいな一冊で、読み終わっても現実を疑いたくなる。

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