※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
あいどる
著者:ウィリアム・ギブスン
世界的ロックスターと人工アイドルが結婚する話
世界的人気バンドのメンバーが、日本のホログラム・ソフトと結婚するらしい、という噂を追って人々が東京に集まる。熱狂的ファンの少女と、情報の奥にある特異点を視る男が、それぞれ別ルートで真相に近づいていき、やがて噂そのものが現実を動かしていく。ロック、テクノロジー、東京、そして「あいどる」を巡る話。
ざっくり時系列
噂が世界を駆け巡る
↓
ロックバンド「ロー/レズ」の話題が加熱する
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ファンの少女チアが東京へ向かう
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レイニーが情報の結節点を追い始める
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「あいどる」を巡る人と情報が交錯する
↓
噂の正体と、その影響が形を持ち始める
物語の主要人物
・チア
世界的人気バンド「ロー/レズ」の熱狂的ファン
・レイニー
情報の奥にある「結節点」を視ることができる男
・レズ
ロックバンド「ロー/レズ」のメンバー
・あいどる
日本で開発されたホログラム・ソフトウェア
噂だけが先走る、21世紀の東京で始まる
物語は、ありえないようでありえそうな噂から動き出す。ロックスターが実体のない存在と結婚する、という話は、瞬く間に世界へ広がる。その中心にあるのが東京。現実と仮想が自然に混ざり合った街で、チアはただのファンとして、レイニーは情報を読む者として、それぞれ違う理由で同じ場所に立つ。
人と情報と「あいどる」が交差していく
東京では、噂を利用しようとする人、純粋に信じる人、ビジネスとして見る人が入り乱れる。チアは街を歩き回り、レズと「あいどる」の距離を感じ取ろうとする。一方レイニーは、ネットワークの奥にある歪みや集中点を辿り、噂が偶然ではないことに気づいていく。人の感情とデータが絡み合い、都市そのものが舞台装置みたいに動き出す。
噂が現実を作り、現実が噂を更新する
話は単純な真偽確認では終わらない。誰かが信じ、語り、注目することで、「あいどる」は単なるソフト以上の存在になっていく。結婚の噂は、事実かどうかよりも、その影響力を増していき、登場人物たちはその渦の中で選択を迫られる。最後に残るのは、情報社会で「本物」とは何か、という感覚。
この小説のポイント
ロックとサイバー文化が自然に地続きで描かれている
東京が未来都市としてではなく、すでに完成した日常として出てくる
噂やイメージが、人や社会をどう動かすかが中心にある
人間と人工物の境界が、いつの間にか曖昧になっている
たぶんこんな小説
派手な事件が次々起こるというより、空気がじわじわ変わっていく感じ。街を歩いているうちに、現実の手触りが少しズレていることに気づくような読後感がある。ロックの熱量と情報の冷たさが同時に漂っていて、21世紀の東京を横目で眺めている気分になる。

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