※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
フューチャーマチック
著者:ウィリアム・ギブスン
ネットワークに「歴史のうねり」が見える男が、世界の変わり目を覗いてしまう話
ドラッグの後遺症で、無限に重なり合うネットワークの中に情報の特異点〈ノーダル・ポイント〉が見えるようになったレイニー。ある日、1911年以来とも言える巨大な結節点を感知し、歴史そのものがサンフランシスコを中心に動き出していると直感する。しかし当の本人は新宿のダンボールハウスで身動きが取れない状態。調査を友人ライデルに託したことで、この「何か新しいもの」の正体を巡る静かな追跡劇が始まる。
ざっくり時系列
ドラッグの後遺症で、レイニーがノーダル・ポイントを見る能力を得る
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ネットワーク上に異常な規模の結節点が現れる
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レイニーは歴史的転換が起きつつあると確信する
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新宿で動けないレイニーが、友人ライデルに調査を依頼する
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ライデルが調査を進めるうちに、命を狙われ始める
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サンフランシスコを中心に、不可逆な変化の輪郭が見えてくる
物語の主要人物
・レイニー
ノーダル・ポイントが見えるようになった男。新宿で身動きが取れない状態
・ライデル
レイニーの友人。調査役として動き、危険に巻き込まれていく
ダンボールハウスから見える、世界規模の異変
レイニーがいるのは新宿の片隅、ダンボールハウスの中。身体的にはほとんど動けないが、ネットワークを通して見える世界は異様なほど広い。彼が感じ取った巨大なノーダル・ポイントは、単なる情報の集中ではなく、時代そのものが切り替わる前触れのようなものだった。その確信だけを頼りに、彼はライデルに調査を託す。
見えない力に追われながら、謎へ近づいていく
調査を始めたライデルは、何者かに監視され、やがて命まで狙われるようになる。何が危険なのかは明確に説明されないが、「見てはいけないものに近づいている」感触だけが積み重なっていく。ネットワーク、都市、歴史の流れが絡み合い、個人の行動が予想外に大きな意味を持ち始める。
新しい何かが生まれる瞬間に、人は立ち会ってしまう
物語の終盤で示されるのは、はっきりした答えというより、世界が次の段階へ移行する瞬間の気配。レイニーが見ていたノーダル・ポイントは、未来の中心点であり、同時に過去から積み重なった必然の結果でもあった。誰かが止められるものではなく、ただ「起きてしまう」変化として描かれる。
この小説のポイント
・ネットワークを「空間」ではなく「歴史の流れ」として描いている
・身体的に動けない主人公という視点
・静かに進むサスペンス構造
・世界が更新される直前の空気感
たぶんこんな小説
派手なアクションより、じわじわ背中が寒くなるタイプ。ネットと現実が溶け合った場所で、「時代が切り替わる瞬間」を盗み見ている感じがある。読み終わると、今いる世界もすでにどこかで次へ進み始めている気がしてくる、そんな余韻が残る一冊。

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