※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
エンパイア・スター
著者:サミュエル・ディレイニー
何も知らない少年が、世界の見え方そのものを書き換えられていく話
辺境で育った少年コム=レインは、ある目的を胸に、銀河文明の中心〈エンパイア・スター〉へ向かう。最初は単純で一直線だった彼の理解は、旅の途中で少しずつ崩れ、重なり、複雑になっていく。この物語は冒険譚の形を取りながら、「世界をどう認識するか」が変わっていく過程そのものを描いていく。
ざっくり時系列
辺境で育った少年コム=レインが登場する
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ある使命を抱え、銀河文明の中心を目指す
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旅の途中で、文明の層の違いに触れる
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単純な理解では説明できない出来事が増えていく
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〈シンプレックス〉的な見方が揺さぶられる
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多面的な〈マルチプレックス〉の世界観に直面する
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エンパイア・スターに到達し、認識が決定的に変化する
物語の主要人物
・コム=レイン
辺境出身の少年。銀河文明の中心を目指して旅をする。
・エンパイア・スター
銀河文明の中枢。物語の目的地であり象徴的存在。
一本道の世界から、重なり合う世界へ
序盤の世界はとてもわかりやすい。善悪や目的が一直線で、少年の理解も単純だ。でも進むにつれて、同じ出来事でも見え方が変わる瞬間が増えていく。何が正しいのか、何が現実なのかが、一つに定まらなくなっていく感覚が強くなる。
「マルチプレックス」という考え方
この物語の核にあるのが、シンプレックスとマルチプレックスという対比。単純で一面的な理解から、複数の視点が同時に存在する認識へ移行していく。その変化は説明されるというより、物語の構造やリズムそのもので体験させられる。
成長とは、強くなることじゃない
コム=レインは戦士になるわけでも、英雄的な勝利を収めるわけでもない。彼が得るのは「世界は一つの答えでできていない」という感覚。その気づきこそが、この物語で描かれる成長になっている。
この小説のポイント
・冒険譚の形をした認識の変化の物語
・シンプレックスとマルチプレックスという概念
・文章と構造そのものがテーマを支えている
・短編ながら密度の高い内容
たぶんこんな小説
さらっと読める長さなのに、読後に頭の中が少しズレる感じが残る。話を理解したというより、「世界の見方が一段増えた」みたいな感覚。SFだけど、アイデアの切れ味を楽しむための一冊、そんな読後感が近い。

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