※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
内なる宇宙
著者:ジェイムズ・P・ホーガン
人格がすり替わる惑星で、宇宙そのものが侵入してくる話
惑星ジェヴレンで、人々の人格が突然別人のものに入れ替わる異常事態が続発する。入れ替わった人々はアヤトラと呼ばれ、新興宗教の活動家になったり、周囲から正気を疑われたりする。しかし彼らは壊れたわけではない。背後では、別の宇宙から巨大コンピュータ網を通じて「人格データ」が送り込まれていた。管理AIジェヴェックス、敗戦後の混乱、見えない侵略。ハント博士とダンチェッカーは、宇宙の外側ではなく内側から迫る脅威に立ち向かう。
ざっくり時系列
惑星ジェヴレンで人格入れ替わり現象が多発する
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人格変容者がアヤトラと呼ばれ社会問題化する
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ジェヴレン管理AIジェヴェックスとの関係が崩れ、社会が混乱する
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人格データが別宇宙から送られている可能性が浮上する
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惑星規模の陰謀が水面下で進行していることが判明する
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ハント博士とダンチェッカーがジェヴレンへ向かう
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“内なる宇宙”の正体と目的が明らかになっていく
物語の主要人物
・ハント博士
ガニメアンの科学者。事態解明の中心人物
・ダンチェッカー教授
ハントの協力者。理論と現場をつなぐ存在
・ジェヴレンのアヤトラたち
人格が入れ替わった人々。異常の鍵を握る
・ジェヴェックス
惑星ジェヴレンを管理してきた超電子頭脳
人格が壊れたのではなく、上書きされた
この物語で起きているのは狂気でも洗脳でもない。人格は情報として扱われ、ネットワーク経由で送り込まれている。つまり、人間そのものが記憶と判断の集合体として操作可能だという前提が、静かに突きつけられる。本人の自覚がある分、周囲から見ると余計に不気味で、社会は疑心暗鬼に包まれていく。
敗戦後の惑星で、見えない支配が進む
ジェヴレンは架空戦争に敗れ、管理AIジェヴェックスとの切断によって秩序を失っている。人々は現実よりも仮想世界に依存してきた過去を持ち、現実に戻された瞬間、判断力を奪われていく。そこにつけ込む形で、人格入れ替わりを利用した惑星規模の策謀が動き出す。
宇宙は外にあるとは限らない
脅威は遠い銀河から艦隊でやってくるわけじゃない。情報として、意識として、すでに中に入り込んでいる。ハントたちは、宇宙とは空間ではなく構造そのものなのではないか、という発想に辿り着く。戦う相手は文明でも種族でもなく、世界の成り立ちそのものだ。
この小説のポイント
・人格と意識を情報として扱うSF設定
・管理AIと人間社会の危うい共存関係
・侵略を「物理」ではなく「構造」で描く発想
・シリーズ中盤ならではのスケール拡張
たぶんこんな小説
読み始めは社会SF、気づくと宇宙論の話をしている。でも難解さよりも、じわじわ広がる不安のほうが印象に残る。自分が自分である理由は何か、世界はどこまでが安全圏なのか。そんな疑問を、静かに頭の中へ送り込んでくる感覚の一冊。

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