※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
時間泥棒
著者:ジェイムズ・P・ホーガン
時間そのものが少しずつ消えていく話
ある日、ニューヨーク市だけで時間がおかしくなり始める。
時計が遅れる、しかも場所によって遅れ方が違う。
最初は機械の故障扱いだった異変は、やがて「本当に時間が減っている」という結論に近づいていく。
原因として浮上するのは、異次元世界の存在が人類の時間を盗んでいるという、とんでもない仮説。
街が混乱する中、議論だけがどんどん積み上がり、時間は確実に失われていく。
ざっくり時系列
ニューヨーク市で時計の遅れが観測される
↓
街の場所ごとに遅れ方が違うと判明する
↓
機械や人為的ミスの可能性が否定される
↓
時間そのものが失われていると考えられる
↓
物理学者たちが原因を巡って議論を始める
↓
異次元存在による時間の搾取という説が出る
↓
対策が決まらないまま時間は減り続ける
物語の主要人物
- 著名な物理学者
時間異常の原因について理論を提示し、議論の中心となる人物 - ニューヨーク市の関係者たち
行政や研究機関として異変に対応しようとする立場 - 市民たち
理由もわからないまま時間の異常に巻き込まれていく存在
ニューヨークだけで起こる奇妙な現象
異常は世界規模ではなく、なぜかニューヨーク限定。
しかも街全体が均一に遅れるわけではなく、地区ごとにズレが生じる。
この中途半端さが、事態を余計にややこしくする。
理論で説明しようとすればするほど、常識的な物理法則からはみ出していく。
科学者たちの終わらない議論
異変を前にして、科学者たちは原因を巡って延々と議論する。
異次元、未知の存在、新しい物理法則。
どの説も突飛なのに、完全には否定できない。
その間にも、時計は確実に遅れ、人々の一日は静かに削られていく。
時間がなくなる恐怖は静かに進む
爆発も侵略も起きない。
ただ、気づいたら使える時間が減っているだけ。
このじわじわした進行が、事態を現実味のある恐怖に変えていく。
対処法が見えないまま、世界は「様子見」を続ける。
この小説のポイント
・派手な事件なしで進む異常事態
・時間を資源として扱う発想
・科学的議論そのものが物語の軸
・問題が起きても決断できない人間社会
たぶんこんな小説
読み心地は、パニックものというより長い会議を覗き見している感じ。
でもその会議の間に、確実に何か大事なものが失われているのがわかる。
時間の異常よりも、「考えているうちに手遅れになる怖さ」が残る、静かで不穏な一冊。

コメント