※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
インフィニティ・リミテッド
著者:ジェイムズ・P・ホーガン
国家にも思想にも縛られない組織が、世界の裏側で全部ひっくり返す話
作家を装いながら諜報活動を続けるバーナード・ファロンのもとに、第三世界の内戦を巡る奇妙な依頼が舞い込む。独裁政府側と共和戦線側、両方から同時に声がかかるという胡散臭さ。その裏で動いていたのは、どの国家にも属さない謎の国際組織〈インフィニティ・リミテッド〉だった。自由な個人主義を掲げる彼らの目的は、単なる政権交代でも革命でもない。ファロンは二重スパイとして潜入を続けるうちに、もっと大きく、厄介な狙いに巻き込まれていく。
ざっくり時系列
ファロンが作家を隠れ蓑に諜報活動を続けている
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第三世界某国の独裁政府と共和戦線の両方から依頼が来る
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旧知の人物が現れ、〈インフィニティ・リミテッド〉の存在が明かされる
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ファロンが共和戦線側に立つ形で行動を開始する
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二重スパイとして政府中枢へ潜入する
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内戦の裏で進む、組織の真の目的が浮かび上がる
物語の主要人物
・バーナード・ファロン
作家を装うフリーの諜報員。物語の中心人物
・〈インフィニティ・リミテッド〉の関係者
国家にも思想にも属さない国際民間組織の構成員
・第三世界某国の独裁政権幹部
内戦と謀略の渦中にいる支配層
・共和戦線の指導者たち
独裁政権と対峙する反政府勢力
どの陣営にも正義がない戦場
この物語では、わかりやすい善悪は最初から期待できない。独裁政府は腐敗しているが、共和戦線も理想だけで動いているわけじゃない。どちらの側にも利用価値があり、切り捨てられる理由もある。その中でファロンは、感情を押し殺しながら役割を演じ続ける。
国家を超えた組織の不気味さ
〈インフィニティ・リミテッド〉は、国家にも政治思想にも忠誠を誓わない。自由な個人主義を掲げているが、その自由は国家よりも冷酷だ。誰かを救うために動いているようで、同時に世界を盤面として扱っている。その距離感が、じわじわと不安を煽ってくる。
真の標的は、政権でも戦争でもない
物語が進むにつれ、内戦そのものが目的ではないことが見えてくる。戦争は手段であり、混乱は必要な条件にすぎない。ファロンは、自分が関わっている仕事のスケールが、個人の信念や倫理を簡単に踏み越えていくことを思い知らされる。
この小説のポイント
・国家を超えた存在が世界を動かすという視点
・二重スパイものとしての緊張感
・イデオロギーよりも個人主義を前面に出した構図
・SF作家ホーガンによる硬派な国際謀略サスペンス
たぶんこんな小説
派手なガジェットや未来技術は控えめで、そのぶん現実にありそうな怖さが強い。どこにも属さない自由は、本当に解放なのか、それとも一番残酷な立場なのか。読み終わると、ニュースの見え方が少し変わる。静かだけど、あとから効いてくるタイプの一冊。

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