※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
青ひげ
著者:カート・ヴォネガット
元・前衛画家の老人が、人生と世界の全部を一枚に描く話
孤独に暮らす元抽象画家の老人が、自分の人生からずっと目をそらしてきた「ある秘密」と向き合う。
芸術、戦争、成功と挫折、そして人類そのもの。
ひねくれたユーモアに包まれながら、最後にとんでもなく真っ直ぐなものを差し出してくる話。
ざっくり時系列
主人公が老境に入り、大邸宅で一人暮らしている
↓
かつて画家として活動していた過去が語られる
↓
若くエネルギッシュな女性が現れる
↓
誰にも見せない納屋の存在が問題になる
↓
主人公が過去と向き合う決意をする
↓
納屋の秘密が明かされ、人生の意味が語られる
物語の主要人物
・ラボー・カラベキアン
元抽象表現派の画家で、現在は隠遁生活を送る老人
・シーリア
主人公の生活に入り込み、停滞を揺さぶる女性
・ダン・グレゴリー
主人公の人生と価値観に影響を与えた人物
世界から引退した老人の、静かすぎる現在
ラボー・カラベキアンは、亡き妻の残した大邸宅で一人暮らしている。
かつては前衛美術の世界に身を置いていたが、今は第一線から完全に退き、抽象画のコレクターとして過去を眺めているだけ。
彼の人生は、すでに終わったもののように見える。
余計なおせっかいが、人生を再起動させる
そんな彼の前に現れたのが、行動力の塊みたいな女性シーリア。
彼女はラボーの暮らしに遠慮なく踏み込み、誰も入れない納屋の存在に強い興味を示す。
その納屋には、ラボーが長年封印してきた過去と向き合えない理由が詰まっている。
一生かけて描けなかったものを描く瞬間
物語の終盤、ラボーは自分がなぜ画家になり、なぜ挫折し、なぜ生き残ってしまったのかを語る。
納屋に隠されていたのは、芸術作品であると同時に、彼の人生そのものだった。
そこには戦争も、人類も、希望も、全部まとめて置かれている。
この小説のポイント
・芸術家の成功と挫折をかなり現実的に描いている
・戦争体験が人生に与える影響が重い
・皮肉と優しさが同時に存在する語り口
・最後に向かって一気に感情が集約される構成
たぶんこんな小説
前半は皮肉たっぷりで淡々としているのに、気づくと感情をがっちり掴まれている。
人生を振り返る話なのに、どこか未来に向けた視線も残っている。
静かだけど、読後にかなり長く余韻が残る一冊。

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