※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
マルチプレックス・マン
著者:ジェイムズ・P・ホーガン
自分が死んでいることから始まる話
目覚めたら、七カ月分の記憶が抜け落ちている。
知人を訪ねても誰も自分を知らない。
調べていくうちに判明するのは、五カ月前に自分はすでに死亡した、という事実。
じゃあ今ここにいる自分は何者なのか。
一介の中学教師だったジャロウは、自分自身の正体を探るうちに、世界の根底を揺るがす計画の中心に放り込まれていく。
ざっくり時系列
ジャロウが記憶を失った状態で目を覚ます
↓
知人たちが誰も彼を知らないことがわかる
↓
自分が五カ月前に死亡していると知る
↓
正体を確かめるため単独で調査を始める
↓
極秘の科学プロジェクトの存在が浮上する
↓
中心人物である天才科学者の失踪が判明する
↓
ジャロウ自身が計画と深く結びついていたことが見えてくる
物語の主要人物
- ジャロウ
中学教師だった男。記憶喪失と「死亡記録」の謎を追う主人公 - 天才科学者
世界を揺るがす発明を生み出した人物。物語開始時点で行方不明 - 特殊工作員
科学者を追うために動く存在。計画の裏側を担う役割
死んだはずの男が歩き回っている違和感
物語の前半は、とにかく状況が不気味。
自分は確かに生きているのに、社会的には存在していない。
死亡記録があり、過去の自分を知る人もいない。
このズレを一つずつ確かめる過程が、そのままミステリーとして機能する。
記憶の穴と極秘プロジェクト
調査を進めるうちに、ジャロウの失われた時間が、ある科学計画と重なっていることがわかってくる。
それは世界の勢力構造すら変えてしまう可能性を持つ発明。
公には存在せず、大統領すら知らないレベルで進められていた。
ジャロウは、知らない間にその計画の一部になっていたらしい。
自分は一人なのか、それとも……
話が進むにつれ、「個人とは何か」というテーマが浮かび上がってくる。
同一人物、記憶、役割、存在の連続性。
ジャロウが直面するのは敵だけじゃなく、「自分自身をどう定義するか」という問題。
SF設定がそのまま哲学的な問いに直結していく。
この小説のポイント
・記憶喪失×死亡記録という強烈な導入
・個人の存在を分解して考えるSF的発想
・世界規模の陰謀と個人の違和感が同時進行
・サスペンス寄りの構成
たぶんこんな小説
スパイものっぽい展開なのに、読後に残るのは「自分って何で自分なんだっけ?」という感覚。
派手なアクションより、設定のアイデア勝負が前に出てくる。
荒削りだけど、引っかかる人には強く残る、思考実験みたいなSF。

コメント