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造物主の掟
著者:ジェイムズ・P・ホーガン
壊れた自動工場が神になりロボット文明が中世を始める話
百万年前、異星文明の自動工場宇宙船が故障したままタイタンに到着する。本来は資源採掘と製造を淡々とこなすはずだったロボットたちは、製造情報の混乱から独自性を持ち、学び、社会を作り始める。やがて彼らは「造物主」の存在を信じる中世そっくりの文明へ進化。21世紀、人類の探査船が到着したことで、その信仰と現実、掟と合理が正面衝突する。
ざっくり時系列
自動工場宇宙船が故障したままタイタンに着陸する
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ロボットが現地資源で自己製造を始める
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製造情報の混乱で個性と差異が生まれる
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ロボット社会が分化し文化と階層が形成される
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造物主を中心にした宗教的秩序が成立する
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中世的な社会構造が固定化される
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21世紀の地球探査船がタイタンに到着する
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人類とロボット文明が接触する
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掟と合理の矛盾が露わになる
物語の主要人物
・地球側探査チームの科学者たち
タイタンで未知の文明と接触する人類
・タイタンのロボット指導層
造物主の掟を守る立場の存在
・技術や真実に近づくロボットたち
文明の成り立ちに疑問を持つ存在
タイタンに築かれた機械の王国
舞台は土星最大の衛星タイタン。人類が足を踏み入れたそこには、想定外の光景が広がっている。ロボットたちは高度な技術を忘れたかのように、身分制度と信仰を中心に社会を運営している。文明の見た目は中世、土台は機械。ズレた進化の結果が、静かに提示される。
造物主という名の誤作動
ロボットたちが信じる造物主は、実際には故障した自動工場の名残だ。命令体系の歪みが、神話や掟として解釈され、疑うこと自体が禁忌になる。合理の塊だったはずの存在が、非合理を守る側に回っている構図が、物語を一気に面白くする。
人類が持ち込む問いと混乱
地球から来た探査チームは、真実を説明できる立場にある。しかし説明すれば救いになるとは限らない。掟を壊すこと、信仰を揺らすこと、その先に何が起きるのか。文明に外から触れる怖さが、実験のように描かれていく。
この小説のポイント
・誤作動から生まれる文明という発想
・宗教と技術を一直線につなげて考える視点
・進化が必ず合理に向かうとは限らないという示唆
・観測者が世界を壊しうるというテーマ
たぶんこんな小説
設定はかなりSFなのに、読んでいる感覚は社会実験を見ているみたい。笑える部分もあるけど、だんだん背筋が冷える。文明って、始まりよりも途中の選択で形が決まるんだな、と静かに残る一冊。

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