※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
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(It)
作品データ
著者:スティーヴン・キング
ジャンル:ホラー/成長物語
子どもたちが恐怖に名前をつけて殴り返しに行く話
アメリカの田舎町デリーで、27年ごとに目を覚ます正体不明の「それ」。子ども時代にこの存在と遭遇し、命がけで立ち向かった7人は、やがて大人になり、すべてを忘れて町を離れる。しかし約束の年、再び惨劇が始まり、彼らは記憶と恐怖を掘り起こしながら、もう一度あの怪物と向き合うことになる。これはピエロの怪物の話であると同時に、忘れたはずの子ども時代そのものに戻っていく物語。
ざっくり時系列
ジョージーが排水溝で殺される
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デリーで子どもたちが次々と恐怖体験をする
↓
落ちこぼれの7人がルーザーズ・クラブを結成
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怪物が27年周期で現れると知る
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子ども時代に下水道で対決する
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血の誓いを立て、それぞれ町を出る
↓
27年後、再び殺人が起きる
↓
大人になったルーザーズが帰郷
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再度下水道へ向かう
↓
最後の戦いで「それ」を倒す
物語の主要人物
・ビル・デンブロー
吃音を抱える少年。弟ジョージーを失ったことが物語の起点になる。
・ベバリー・マーシュ
家庭に問題を抱える少女。クラブの中心的存在。
・ベン・ハンスコム
いじめられっ子の少年。後に重要な役割を担う。
・リッチー・トージャー
おしゃべりでムードメーカー的存在。
・エディ・カスブラク
喘息持ちの少年。恐怖と身体の弱さに縛られている。
・スタン・ユリス
理屈と秩序を重んじる少年。
・マイク・ハンロン
町の歴史を記録する少年。大人になってもデリーに残る。
小さな町で始まる、取り返しのつかない夏
1950年代後半、メイン州デリーでは、子どもが消える事件が繰り返されていた。雨の日に排水溝で命を落としたジョージーをきっかけに、町の裏側が少しずつ姿を現す。7人の子どもたちは、それぞれ違う恐怖の形で「それ」と遭遇し、この町そのものが何かおかしいと気づき始める。
恐怖に立ち向かうための奇妙な団結
彼らは怪物が姿を変え、恐怖を餌にしていることを知る。銀が効くかもしれない、意志の力が武器になるかもしれない。不確かな手がかりを頼りに、子どもたちは下水道へ向かい、命がけの対決を行う。勝ったのかどうかも分からないまま、彼らは再会の約束だけを残して大人になる。
忘却の先で、もう一度同じ場所へ
27年後、再びデリーで殺人が始まる。大人になったルーザーズは、電話一本で忘れていた記憶を呼び起こされる。恐怖、罪悪感、子ども時代の自分。逃げ続けてきたものと向き合うため、彼らは再び下水道へ向かい、今度こそ終わらせるための戦いに挑む。
この小説のポイント
この物語は、怪物との戦いを描きながら、記憶や成長、忘れることの残酷さをじっくり描いている。恐怖は外から来るものだけではなく、家庭や町、過去そのものから生まれるという感覚が、じわじわと積み重なっていく。
たぶんこんな小説
怖い場面は多いけれど、それ以上に「子どもだった頃の自分」を思い出させる話。ピエロが出てくるホラーという顔をしながら、実際には長い人生の中で一度きりの夏を描いた、とても大きな物語。読み終わると、デリーという町と同じように、頭の中にしばらく残り続ける感触がある。

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