※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
アンダー・ザ・ドーム
(Under the Dome)
作品データ
著者:スティーヴン・キング
ジャンル:SF
見えない壁に閉じ込められた町で、権力者と元軍人がガチでぶつかる話
メイン州チェスターズ・ミルに、通行不能で目に見えないドームが突然落ちてきて町が完全封鎖。元陸軍のデール “バービー” バーバラは脱出どころか、町を仕切ろうとする副町長ビッグ・ジムに目を付けられて犯人扱いで逮捕される。外の軍はバービーを代理人にして動力源を探させ、町の中では支配と暴力が加速。やがてドームの正体が地球外由来っぽい装置だと判明し、火災と毒気で町が崩壊寸前までいく中、バービーとジュリアが“作った側”に解放を懇願して、ドームが上昇して消える。
ざっくり時系列
10/21 11:44 ドーム出現、町が封鎖され死傷者発生
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デューク署長が死亡、ビッグ・ジムが権力を握り警察を私物化
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ジュニアがアンジー、ドディーを殺害
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外のコックス大佐がジュリア経由でバービーに連絡、動力源探索を依頼
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ブレンダがビッグ・ジムの犯罪ファイルを発見
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バービーが濡れ衣で逮捕
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町民がガイガーカウンターで発生源を追い、廃農場の装置を発見
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規制と横暴が激化、住民がバービーを脱獄させる流れに
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装置に触れた人々が幻覚を体験、設置者が地球外生命体レザーヘッドだと結論
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“ビジターデー”前後に銃撃戦と爆発、町の大半が火災で壊滅
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生存者が酸素不足と毒気で追い詰められる
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バービーとジュリアが装置へ、レザーヘッドに解放を懇願
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ドームが上昇して消滅、町が解放される
物語の主要人物
・デイル “バービー” バーバラ
元陸軍の男。ドームに閉じ込められ、外の軍から動力源探索を託される
・ジュリア・シャムウェイ
地元紙の編集者。コックス大佐とバービーの仲介役になり、行動の中心に入っていく
・ジェームズ “ビッグ・ジム” レニー
副町長。ドーム混乱を利用して町を乗っ取り、警察や住民を支配する
・ジェームズ “ジュニア” レニー
ビッグ・ジムの息子。脳腫瘍が進行し、暴力と妄想が暴走していく
・ジェームズ・O・コックス大佐
ドーム対応側の軍人。バービーを“政府の代理人”として使い、発生源を探らせる
・エリック “ラスティ” エベレット
医師助手。混乱の中で人命を支え、権力側からも目を付けられる
・ジョセフ “スケアクロウ・ジョー” マクラッチー
13歳の少年。友人たちとドームの謎に迫り、バービーの味方になる
11時44分、町がいきなり世界から切り離される
2017年10月21日午前11時44分。チェスターズ・ミルに突然ドームが出現して、道路も通信も人の移動もめちゃくちゃになる。近づいただけで死ぬような事故も起きて、町は一気にパニック。そんな中、出ようとしていたバービーも閉じ込められてしまう。外では軍がドーム周辺を固め、内側では「これ誰が仕切る?」の空気が一気に強くなる。
ドームより怖いのは、町の中で加速する支配と濡れ衣
署長デュークが死亡すると、副町長ビッグ・ジムがチャンス到来とばかりに警察を握り、無能なランドルフを署長に据える。さらに息子ジュニアやその仲間を“それっぽい権力側”として増員して、町の空気を支配していく。しかもジュニアはアンジーやドディーを殺害していて、状況はもう最悪。外のコックス大佐はジュリア経由でバービーに連絡し、町のどこかにあるはずの動力源を探せと依頼。ところが町の中では、ビッグ・ジムの犯罪計画に近づいたブレンダや牧師コギンズが消され、バービーに殺人の容疑がかけられて逮捕される。ドームの異常と、町の政治が同時に牙をむく感じ。
発生源は廃農場、そして“観察される蟻の巣”みたいな真相へ
バービーが拘束されている間も、住民たちはガイガーカウンターで手がかりを追い、廃農場の果樹園で装置を発見する。触れた人々は幻覚を体験し、この装置は地球外生命体レザーヘッドが置いたものだと結論する。しかも相手は、知覚を持つ存在を捕獲して眺めるために、娯楽としてドームを設置した若者たちだという見立てに至る。ここからさらに地獄で、ビッグ・ジムが製造事業を巡って武装衝突を起こし、爆発と火災が町を焼き尽くし、1000人以上が焼死。生存者も毒気と酸素不足でじわじわ追い詰められていく。最後はバービーとジュリアが制御装置へ向かい、ジュリアが一体のレザーヘッドと接触して「自分たちは小さな命じゃない、感じて考える存在なんだ」と訴える。するとドームがゆっくり上昇して消え、町は解放される。
この小説のポイント
・異常現象そのものと同じくらい、人間同士の権力闘争が前面に出てくる
・封鎖が続くほど、警察、宗教、噂、暴力が連鎖して“町のルール”が歪んでいく
・外の軍の介入も万能じゃなく、内側の政治と恐怖がどんどん状況を悪化させる
・装置の正体が見えた後も、解決まで一直線じゃなく、火災と毒気で追い込みが来る
・最後の突破口が「戦って壊す」じゃなく「相手に伝える」方向に寄っている
たぶんこんな小説
閉鎖空間で社会がギュッと煮詰まって、善意も悪意も一緒に沸騰していく感じが強い。SFのギミックは派手なんだけど、読後に残るのは「町って、集団って、こういう方向にも転がるんだな…」みたいな感触かもしれない。で、そこにバービーとジュリアの“最後まで踏ん張る線”が通っていて、息苦しさの中にも前へ進む力が残る印象。

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