※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
ジョイランド
(Joyland)
作品データ
著者:スティーヴン・キング
ジャンル:青春ミステリー
失恋でボロボロの夏バイト青年が、遊園地の幽霊事件と少年の願いに巻き込まれる話
大学生デヴィン・ジョーンズはノースカロライナ州の遊園地ジョイランドで夏季バイトを始める。恋人ウェンディに振られて心身が崩れかけるけど、マスコット役ハウイーで子どもを喜ばせる才能を見つけて踏ん張る。そんな中、ダークライド“ホラーハウス”で殺された少女リンダ・グレイの幽霊の噂を知り、事件を追う流れへ。やがてデヴィンは、よそよそしい母アニーと病気の少年マイクと親しくなり、マイクのための特別なジョイランド体験を実現する。そこで幽霊が解放され、同時に殺人犯の正体も見えてきて、嵐の夜に観覧車で決着がつく。
ざっくり時系列
デヴィンがジョイランドで夏季バイト開始
↓
占い師ロジーに「赤い帽子の女の子」と「犬を連れた男の子」に会うと告げられる
↓
恋人ウェンディに捨てられ、デヴィンが心身ともに荒れる
↓
マスコットのハッピー・ハウンド(ハウイー)役が得意だと気づき、仕事に没頭
↓
ホットドッグで窒息しかけた少女を救い、園内と地元で称賛される
↓
ホラーハウスで殺されたリンダの幽霊の噂を知り、事件に興味を持つ
↓
夏の終わり、デヴィンが休学して閉園中の公園に残る
↓
近所のアニーと病気の息子マイクと親しくなる
↓
マイクがリンダの幽霊を知っていて、ロジーの予言の「犬を連れた男の子」だと判明
↓
マイクのためのプライベートなジョイランド旅行を実現、幽霊が解放される
↓
写真から殺人犯がレーン・ハーディだと気づく
↓
嵐の夜、レーンがアニーとマイクを観覧車に閉じ込めるが、アニーがレーンを射殺
↓
デヴィンは学校へ戻り、マイクは翌年春の終わりに亡くなり、遺灰を海岸に撒く
物語の主要人物
・デヴィン・ジョーンズ
夏のバイトでジョイランドへ来た青年。失恋と事件の中で踏ん張っていく
・ウェンディ
デヴィンの恋人。学期末の約束を破り、別の恋人ができたと手紙で告げる
・ロジー
地元の占い師。デヴィンに夏の出会いの予言をする
・トム
デヴィンと同じ新入社員。幽霊を見た可能性がありつつ、黙っている
・エリン
デヴィンと同じ新入社員。未解決事件の調査を進め、資料を集める
・レーン・ハーディ
観覧車を担当する従業員。デヴィンの相棒のように働くが、真相に関わる
・リンダ・グレイ
ホラーハウスで殺害された少女。幽霊が出没すると噂される
・アニー
ジョイランド近くに住む女性。最初は冷たいが、デヴィンとの距離が変わっていく
・マイク
アニーの息子。病気で死期が近い。犬を飼い、幽霊の存在を知っている
失恋で地面にめり込みながらも、遊園地の仕事がデヴィンを立たせる
デヴィンはジョイランドで働き始めるけど、恋人ウェンディに振られて精神がズタズタになる。寝ない、食べない、音楽を聴いて自殺を思いつく、みたいな危ういところまで行く。そんなデヴィンが踏みとどまるのが、マスコットのハウイー役。子どもを笑わせるのが得意だと気づいて、仕事そのものが命綱みたいになっていく。で、ハウイーの最中に窒息しかけた女の子を助けた事件で、園の創設者イースターブルックにも認められて、デヴィンは一気に“ここで生きていけるかも”って感触を持つ。
幽霊の噂がただの怪談で終わらず、事件の線がつながっていく
ジョイランドには、ホラーハウスで殺されたリンダ・グレイの幽霊が出る噂がある。トムは見ても黙るけど、デヴィンは黙れないタイプで、そこから事件に興味を持つ。夏が終わってもデヴィンは休学して公園に残り、エリンが外で調査を進めて資料を持ち帰る。すると、これが警察が関連づけていない未解決殺人の連鎖の一部らしいと見えてくる。遊園地のキラキラの裏側で、ずっと消えない“染み”みたいに事件が残ってる感じが強くなる。
赤い帽子の女の子と犬の男の子、予言が現実になっていく
デヴィンは近所のアニーと、その息子マイクと仲良くなる。アニーはよそよそしいけど、デヴィンが死にゆくマイクを楽しませているのを見て態度が変わっていく。マイクは犬を飼っていて、しかもリンダの幽霊を知っている。ここでデヴィンは、ロジーの予言のもう片方がマイクだったと気づく。デヴィンはマイクのためにプライベート旅行を手配し、従業員たちも全力で“最初で最後のジョイランド”を作る。マイクがホラーハウスの近くにいたことで、リンダの幽霊は解放される。
嵐の夜、観覧車で真犯人が牙をむく
終盤、デヴィンは写真を見直して、殺人犯がレーン・ハーディだと気づく。レーンは察して脅しをかけ、嵐の中でアニーとマイクを観覧車に閉じ込め、デヴィンも殺そうとする。そこへアニーが現れてレーンを射殺し、事件は決着。さらに、マイクは別の幽霊に起こされて危険を警告されていたことも分かる。夏の終わりの遊園地の空気と、ホラーと、ぎりぎりの優しさが一気に重なる場面。
この小説のポイント
・失恋の痛みが最初から最後までちゃんと効いていて、成長の軸になってる
・遊園地の仕事描写が濃くて、仲間や客の空気が手触りで伝わる
・幽霊の噂が、過去の事件と今の危機の両方に絡んでくる
・マイクの“初めてで唯一のジョイランド”が物語の芯になっていく
・最後の決着が派手なヒーローじゃなく、守る側の必死さで転がる
たぶんこんな小説
夏の終わりっぽい匂いがずっとしてる話。遊園地の眩しさと、閉園後のさみしさと、思い出になっていく速度が早すぎる感じが混ざってる。怖い出来事もあるけど、それ以上に「誰かの一回きりの時間を、ちゃんと光らせる」方向に芯がある雰囲気。

コメント