※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
人形つかい
(The Puppet Masters)
作品データ
著者:ロバート・A・ハインライン
ジャンル:SF
背中に張りつくナメクジに人類が静かに支配されかけ、ギリギリで反撃に転じる話
2007年のアメリカ。人知れず地球に侵入した宇宙生物は、人間の背中に張りつき、神経を乗っ取って操る。国家も議会も信用できない中、極秘機関のエージェントたちは、裸になることすら厭わず、人類が操り人形になる未来を止めようとする。疑心暗鬼と非常手段の連続の末、人類はついに反撃へ踏み出す。
ざっくり時系列
空飛ぶ円盤の報告が相次ぐ
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デモインでナメクジ型寄生生物の侵略を確認
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エージェントが次々と乗っ取られる
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議会に侵略の事実が認められる
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背中を見せることが義務化される
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放送センター奪還作戦が失敗
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金星由来の病気が弱点と判明
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生物兵器で一気に形勢逆転
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最後のナメクジとの決着
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人類は土星へ攻勢に出る
物語の主要人物
・サム(エリヒュー・ニーヴンズ)
極秘諜報機関のエージェント。物語の語り手
・メアリー
サムの同僚エージェント。過去にナメクジと接触経験がある
・老人(アンドリュー・ニーヴンズ)
秘密機関「セクション」の長官
円盤は前兆だった、静かに始まる侵略
物語は、空飛ぶ円盤の調査という、どこか牧歌的ですらある任務から始まる。しかし現地で待っていたのは、ナメクジのような生物が人間の背中に張りつき、完全に操っている現実だった。侵略は派手な戦争ではなく、都市単位で静かに進行している。疑う余地はあっても、証明ができない。ここで漂う不安と緊張が、この物語の空気を決定づける。
誰が人間で、誰が操られているのか
ナメクジはエージェントすら簡単に乗っ取り、サム自身も一度は完全に支配される。議会、上流階級、都市機能が次々と侵食され、背中を見せなければ信用されない社会が成立する。放送センターを奪還して真実を伝える作戦も失敗し、人類は圧倒的に不利な立場へ追い込まれていく。
病気という逆転札と、最後の逃走
転機は、金星での過去と病気の存在だった。ナメクジは人間よりも早く死滅する感染症に弱い。人類は生物兵器という危険な手段に踏み切り、一気に形勢を覆す。最後には老人が乗っ取られ、サムと共に逃走するが、サムは決着をつける。侵略は止まり、戦いは地球の外へ向かう。
この小説のポイント
・派手さよりも疑心暗鬼が主役の侵略描写
・国家と個人の境界が曖昧な非常時の倫理
・秘密機関が前提となる世界観
・身体を使った確認という極端な対抗策
たぶんこんな小説
読んでいる間ずっと、落ち着かない。誰が味方で誰が敵かわからず、正しい行動がどこにあるのかも揺れ続ける。それでも話は止まらず、最後には人類が反撃に出る。スカッとするというより、背中がぞわっとする感触が長く残るSF。

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