※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
銀河市民
(Citizen of the Galaxy)
作品データ
著者:ロバート・A・ハインライン
ジャンル:SF
奴隷の少年が、宇宙を渡り歩いた末に銀河規模の責任を背負わされる話
奴隷市場で売られていた少年ソービーは、老乞食バスリムに買われ、奇妙な教育と訓練を受けながら育てられる。やがてバスリムが反奴隷制の諜報員だったことが明らかになり、彼の死をきっかけにソービーは宇宙へ逃げ出す。自由貿易民の宇宙船で新しい文化と役割を身につけた後、今度は地球覇権の軍へと引き渡され、ついには自分が巨大企業の正統な後継者であることを知る。逃げ続けてきた「立場」から、最後は逃げられない「責任」を引き受けるところへ着地していく。
ざっくり時系列
惑星ジュブッブルの奴隷オークションでソービーが売られる
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老乞食バスリムに買われ、教育と訓練を受ける
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バスリムが奴隷貿易を探る情報収集者だと気づく
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バスリム逮捕、尋問前に自殺
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ソービーが緊急メッセージを宇宙船シスーのクラウザ船長に届ける
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自由貿易民の一員として宇宙生活を送る
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海賊船との戦闘で活躍、火器管制官になる
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地球覇権防衛軍に引き渡され、バスリムの正体を知る
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ソービーが名家ルドベック一族の第一相続人だと判明
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叔父ウィームズビーとの委任状争奪戦
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会社の実権を掌握
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奴隷貿易と戦うため企業のトップとして生きる決断をする
物語の主要人物
・ソービー
奴隷として売られた少年。後に巨大企業の正統後継者だと判明する
・バスリム
障害を持つ老乞食。反奴隷制の諜報員で、ソービーの育ての親
・クラウザ船長
自由貿易民の宇宙船シスーの船長。ソービーを保護する
・マタ
シスーの乗組員。ソービーの直属の上司
・ジョン・ウィームズビー
ルドベック家の「叔父」。会社を実質的に支配している人物
・レダ
ウィームズビーの継娘。委任状争奪戦で重要な役割を果たす
奴隷市場から始まる、静かなスパイ教育
物語の最初はかなり地味。ソービーは奴隷として売られ、物乞いの地下住居で生活する。でもこの生活がやたらと不自然で、数学や歴史、言語まで教え込まれる。バスリムはただの乞食じゃなく、奴隷貿易を監視するために潜り込んでいる人物だった。ここでソービーは、殴られて鍛えられるんじゃなく、「考える力」で生き延びる訓練を受けていく。
宇宙船で学ぶ、自由だけど不自由な一族社会
バスリムの死後、ソービーは自由貿易民の宇宙船に逃げ込む。彼らは母系で氏族主義、閉鎖的で、よそ者にはかなり厳しい。でも一度仲間になると、立場と役割がきっちり与えられる社会でもある。ソービーは火器管制官として才能を発揮し、戦闘で仲間を救う。ただし、同じ集団内での恋愛はタブーという、また別の縛りにもぶつかる。
正体判明で一気に話が重くなる
地球覇権防衛軍に引き渡されたところで、物語のトーンが変わる。ソービーは、実は銀河規模の企業ルドベック・アンド・アソシエイツの正当な後継者だった。ここからは冒険よりも政治と法律の話になる。叔父ウィームズビーとの静かな権力争い、会社と奴隷貿易の関係、両親の死の真相。派手な戦闘は減るけど、責任の重さが一気にのしかかる。
この小説のポイント
・奴隷、放浪者、船員、軍、企業トップと、立場が何度も変わる構成
・自由を求めて動くほど、より重い責任に近づいていく流れ
・戦闘よりも、文化や制度の違いがドラマを作っている
・「正義の戦い方」が途中で大きく変わる
たぶんこんな小説
前半は成長冒険譚っぽいのに、後半は急に現実的で重たい。ヒーローが敵を倒して終わりじゃなく、「じゃあ、その後どう責任取るの?」ってところまで連れていかれる感じ。読み終わると、タイトルの「市民」って言葉が、思ってたよりずっと重く響いてきそう。

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