※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
説得
(Persuasion)
作品データ
著者:ジェイン・オースティン
ジャンル:恋愛小説/社会小説
失った婚約が、バースで手紙になって戻ってくる話
19歳のとき、アン・エリオットは海軍士官フレデリック・ウェントワースの求婚を受けたのに、周囲の声に押されて婚約を解消してしまう。そこから約8年、浪費で家が傾き、ケリンチ・ホールを貸してバースへ移る中で、アンは彼と再会する。マスグローブ家での社交、ライム・リージスでの事故、バースでの駆け引きと誤解を経て、アンには二度目の「愛と結婚」の現実的なチャンスが巡ってくる。
ざっくり時系列
アンがウェントワースの求婚を受け、婚約する
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家族とラッセル夫人に説得され、アンが婚約を解消する
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サー・ウォルターの浪費で家計が崩れ、ケリンチ・ホールを貸してバースへ移る
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クロフト提督夫妻が借家人になり、ウェントワースが訪ねてきてアンと再会する
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アッパークロスでマスグローブ家と交流が深まり、ウェントワースは結婚を考える
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ライム・リージスでルイザが転落し、重い脳震盪を負う
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アンはバースへ合流し、従弟ウィリアム・エリオットが接近する
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スミス夫人からウィリアムの打算と過去を知らされ、アンが距離感を見直す
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ルイザがベンウィック大尉と婚約する知らせが入る
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ウェントワースがアンの言葉に動かされ、手紙で想いを告白する
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二人は和解し、婚約を再開する
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ウィリアムは去り、クレイ夫人も彼に続く
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アンは海軍大尉の妻として新生活へ落ち着く
物語の主要人物
・アン・エリオット
準男爵家の次女。27歳。かつて婚約を解消し、再会後も気持ちを抱え続ける
・フレデリック・ウェントワース大尉
海軍士官。かつてアンに求婚し、戦争での功績と富を得て戻ってくる
・サー・ウォルター・エリオット
アンの父。虚栄心が強く浪費で家計を傾け、バース移住の原因を作る
・ラッセル夫人
亡きエリオット夫人の親友。かつてアンに婚約解消を勧めた
・メアリー・マスグローブ
アンの妹。マスグローブ家に嫁ぎ、アッパークロスでの交流の中心になる
・ルイザ・マスグローブ
マスグローブ家の娘。ウェントワースに好意を寄せ、ライムで転落事故に遭う
・ウィリアム・エリオット
遠縁の従弟で推定相続人。洗練された態度でアンに近づくが思惑が見えにくい
・スミス夫人
バースで困窮するアンの旧友。ウィリアムの過去をアンに伝える
家が傾いて、ケリンチ・ホールが人に貸されるところから始まる
物語は、アンとウェントワースの婚約解消から7年後。エリオット家はサー・ウォルターの浪費で苦しくなり、先祖代々のケリンチ・ホールを貸して、体裁と社交の町バースへ移る流れになる。
アンはまず妹メアリーのいるアッパークロスへ行き、マスグローブ家に受け入れられる。そこへ、ケリンチ・ホールの新しい借家人クロフト提督夫妻(提督の妻はウェントワースの妹)を通じて、ウェントワースが現れ、アンと再会。二人とも独身のまま、止まっていた時間が動き出す。
アッパークロスで揺れて、ライムで落ちて、気持ちの向きが変わる
アッパークロスでは、ウェントワースがマスグローブ家の姉妹(ヘンリエッタ、ルイザ)と親しくなり、周囲は「どちらと結婚するのか」を勝手に盛り上げる。アンは平静を装いながらも、会うたびに感情の準備が必要になる。
さらに一行は海辺のライム・リージスへ。ここでルイザが防波堤から飛び降りようとして転落し、重い脳震盪を負う。アンは冷静に助けを呼び、場を動かす。その姿にウェントワースは強く心を揺さぶられ、同時に「誰にも説得されないように」とルイザを煽った自分の言葉を悔いる。事故は、周囲の軽さと、アンの落ち着きと、ウェントワースの迷いを一気に露出させる出来事になる。
バースの社交戦で、最後は手紙が全部ひっくり返す
ルイザの療養が続く間、アンはバースで父と姉エリザベスに合流する。そこへ推定相続人のウィリアム・エリオットが現れ、家族は大喜び。アンにも丁寧に近づいてきて、空気は一気に「結婚向きの人選」モードになる。
でもアンは、旧友スミス夫人からウィリアムの冷酷さや打算、スミス夫人が困っているのに助けなかった話を聞き、彼への見方が変わっていく。
やがてルイザがベンウィック大尉と婚約した知らせが入り、ウェントワースもバースへ。ウィリアムがアンに求愛しているように見えて、ウェントワースは嫉妬に揺れる。そんな中、アンが「女性は希望を失っても愛を捨てない」と語る場面をウェントワースが耳にして、決定打が来る。ウェントワースは手紙を書き、アンに想いを告白。外で二人は和解し、互いの気持ちを確認して婚約を再開する。ラッセル夫人も自分の判断の誤りを認め、二人を承認する。
この小説のポイント
・説得する側/される側の力学が、恋愛だけじゃなく家族や社交の場でもずっと効いている
・アンは感情を押し殺すだけじゃなく、危機の場面で実務的に動ける人として描かれる
・再会ものの甘さだけじゃなく、噂、体裁、相続、経済事情が恋の進み方を左右する
・ライムの事故が、人の言葉の重さと、信念と、後悔をまとめて噴き出させる
・最後の手紙が、社交の駆け引きを一気に越えていく瞬間になっている
たぶんこんな小説
静かに我慢してきた気持ちが、社交のざわざわや噂話の中で少しずつ形を取り戻していく感じ。派手な事件が連発するというより、視線とか言葉とか間合いの変化で、関係がジワッと動く。海軍の空気、バースの空気、田舎の集まりの空気がそれぞれ違って、そこで同じ二人がどう見えるかが面白いタイプの物語だよ。

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