※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
栄光のスペース・アカデミー
(Space Cadet)
作品データ
著者:ロバート・A・ハインライン
ジャンル:SF/青少年向け/士官学校もの
アイオワの少年が宇宙の警察に憧れて入隊し、いきなり銀河級の責任を背負わされる話
2075年、マット・ドッドソンは惑星間パトロール隊を目指して士官候補生に。訓練船で仲間と鍛えられ、配属後すぐに小惑星帯の遭難事件と、金星でのトラブルに巻き込まれる。行方不明船の調査で「太陽系の過去を揺らす証拠」に触れ、金星では元同級生のせいで現地文明と衝突寸前。しかも帰る足まで失うが、伝説の船アスタート号を再就役させて突破する。終盤は「英雄扱いされたい気持ち」を置いて、巡視員としての当たり前を理解していく。
ざっくり時系列
2075年、マットが惑星間パトロール隊に志願する
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身体検査・精神検査・倫理検査を通過し士官候補生になる
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訓練船PRSジェームズ・ランドルフ号で訓練、仲間と固まる
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傲慢なルームメイトのジラード・バークが去り商船隊へ
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現役艦Aes Triplexに配属され、研究船パスファインダー捜索へ
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パスファインダー発見、全員死亡と「爆発した惑星」の不穏な証拠が出る
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半数が修理船で地球へ急行、残りは低速軌道で帰還予定に
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金星で事件、着陸船が陥没穴に落ちて泥に消え、指揮系統が崩れる
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金星人に捕らえられるが、原因がバークの人質事件だと判明
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女家長の信頼を得て解放されるが、帰還手段がない
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伝説のアスタート号を見つけ再就役、南極コロニーへ飛ぶ
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マットが「期待されてた任務だった」と理解して一段大人になる
物語の主要人物
・ウィリアム・“テックス”・ジャーマン
マットの同期の士官候補生、行動を共にする仲間
・オスカー・ジェンセン
金星生まれの同期、金星事件で指揮を執る立場になる
・ピエール・アルマン
ガニメデ出身の同期、候補生仲間の一人
・ジラード・バーク
裕福な宇宙船建造業者の息子、後に金星事件の火種になる
・ブランドン・サーロー中尉
金星地表派遣の現場にいる上官、負傷で昏睡する
試験と訓練と寮生活で、宇宙の士官学校が始まる
惑星間パトロール隊は名門で、入るまでがまず大変。マットは検査をくぐり抜けて士官候補生になり、訓練船PRSジェームズ・ランドルフ号へ。同期との結びつきができる一方、傲慢なバークは馴染めず離脱して商船隊へ行く。ここで「同じ制服でも、目指すものが違う人間がいる」って空気が早めに出てくる。
行方不明船の死体発見で、太陽系の裏側がチラ見えする
Aes Triplex配属後の初任務は、小惑星帯で消えたパスファインダー捜索。見つかった船は、装甲外側エアロックドアが開いた状態で高速移動物体に貫かれ、全員死亡という最悪の現場。しかも研究者たちは、爆発して小惑星帯になった惑星に知的種族がいて、爆発が人為的っぽい証拠を掴んでいた。艦長は情報を急いで地球へ送るため乗員を分け、候補生たちは「帰還が遅い側」に残ることになる。
金星で帰り道が消えて、候補生が現場の責任者になる
次に飛び込むのが金星の事件。着陸船が陥没穴に落ちて泥に消え、サーロー中尉は負傷して昏睡、ジェンセンが指揮を取る。金星人は知性があり普段は友好的なのに、この時は人間を捕らえる。理由はバークの探鉱船が現れて長老を人質に取り、放射性鉱床の採掘許可を迫ったせいだった。ジェンセンは女家長の信頼を勝ち取り「自分たちは名誉ある文明人だ」と説得して解放まで持っていくが、着陸船もバークの船も飛べない。そこで出てくるのが、1世紀以上前に消えた伝説のアスタート号。原住民の助けで再就役させ、南極コロニーへ飛び、マットは「これくらいが巡視員の期待値なんだ」と飲み込んでいく。
この小説のポイント
・惑星間パトロール隊が核兵器の独占と抑止を担う設定で、責任の重さがド直球で来る
・国ではなく「人類全体」への忠誠を求められ、家族との口論まで起きるのがリアル
・金星人との対立で、人種差別や異文化の摩擦をテーマとして扱っている
・海兵隊/商船隊を含め「良い兵士とは何か」を人間の動機の分類で語るサブプロットがある
・携帯電話っぽい装置の描写が出てきて、当時のSFの先読み感が面白い
たぶんこんな小説
士官学校の訓練と同期の友情でワクワクさせつつ、任務に出た瞬間に「え、その責任を候補生に背負わせるの?」ってレベルの重みが乗ってくるタイプ。冒険は派手なのに、着地はちゃんと職業倫理と成熟に寄っていく感じで、読み終わると背筋がスッと伸びる余韻が残る。

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