※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
ターミネーション・ショック
著者:ニール・スティーヴンスン
気候変動にキレた金持ちが「地球を冷やす銃」を撃ち始めて、世界が本気で割れ始める話
地球温暖化が止まらない近未来。オランダ女王サスキアの不時着事故をきっかけに、テキサスのハンター・ルーファスと彼女の運命が交差する。一方その頃、億万長者T.R.シュミット博士は、成層圏に二酸化硫黄を撃ち込む“世界最大の銃=ビッグガン”を建設し、独断で地球冷却を始めてしまう。善意か暴走か。国家も企業も個人も、それぞれの立場で「取り返しのつかない一線」を越え始める。
ざっくり時系列
オランダ女王サスキアの小型機が野ブタと衝突し不時着
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その場に居合わせたハンターのルーファスがサスキアを救助
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気候変動で世界各地が深刻な被害を受けている状況が描かれる
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T.R.シュミット博士がソーラー・ジオエンジニアリング計画を推進
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巨大装置ビッグガンによる成層圏への噴射実験が実行される
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支持派と反対派の対立が国際問題へ発展
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登場人物たちが、それぞれの正義で地球規模の危機に関わっていく
物語の主要人物
・サスキア
オランダの女王。自ら操縦する小型機の事故をきっかけに物語へ巻き込まれる
・ルーファス
テキサスのハンター。野ブタを追っていた最中にサスキアと出会う
・T.R.シュミット
テキサスの億万長者。地球を冷やす計画を独断で進める科学者
野ブタ事故から始まる、やたらとスケールの大きい連鎖
物語の入口はかなり素朴で、野ブタと飛行機の事故という偶然から始まる。でもその直後から、話は一気に国家・科学・地球環境レベルへ跳ね上がる。サスキアとルーファスの行動は、あくまで個人的な善意や判断なのに、それが巨大な政治と技術の流れに飲み込まれていく感覚が強い。
「世界を救う」という名目で、誰が引き金を引くのか
T.R.の計画は、温暖化を止めるためという大義名分がある。だが、国家の合意もなく、実験を既成事実として進めてしまうやり方は、明らかに危うい。支持者は「もう時間がない」と言い、反対者は「取り返しがつかない」と叫ぶ。どちらも間違っていないからこそ、対立は激化していく。
神話みたいな英雄たちが、現実の地球をいじり始める
終盤で描かれるのは、完全な勝利でも破滅でもない状態。人類は問題を解決したのか、それとも別の地雷原に足を踏み入れたのか。その判断は読者に委ねられる。登場人物たちは英雄的で破天荒だけど、やっていることはどこまでも現実的で、生々しい。
この小説のポイント
・気候変動を真正面から扱ったCli-Fi
・「善意の暴走」を具体的な技術で描く
・国家より先に個人が引き金を引く怖さ
・神話的スケールと現代的リアリズムの混在
たぶんこんな小説
とんでもない話なのに、「これ現実でも起こりそうだな」と思わされる感触がある。正解を提示するというより、読んでるうちに自分の立場が何度も揺さぶられるタイプ。地球を救うって、こんなに厄介なんだっけ、って考えが頭から離れなくなる一冊。

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