※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
七人のイヴ
著者:ニール・スティーヴンスン
月が割れて人類が七人になるところから始まる話
ある日、理由も分からないまま月が七つに分裂する。やがて月の破片同士が衝突を繰り返し、二年後には無数の隕石が地球に降り注ぐ〈ハード・レイン〉が起きることが確定する。地上で生き延びる道はなく、人類は宇宙に逃げるしかない。国際宇宙ステーションを中心に進められる〈クラウド・アーク〉計画によって、選ばれたわずかな人間だけが宇宙に残される。だが生存はゴールではなく、そこから人類をどう続かせるかという、途方もない問題が始まる。
ざっくり時系列
月が突然七つに分裂する
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二年後に地球滅亡が確定する
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各国が〈クラウド・アーク〉計画を立ち上げる
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宇宙に残る人類約1500人が選抜される
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〈ハード・レイン〉によって地球が死の世界になる
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宇宙で生き残った人類が思想の違いで分裂する
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人類の存続を巡る選択が重ねられていく
物語の主要人物
・ダイナ
宇宙飛行士として〈クラウド・アーク〉計画に関わる女性
・アイヴィ
科学者として人類存続の判断に深く関与する
・ジュリア
政治的判断を迫られる立場にある人物
・エイダ
極限状態の中で重要な決断を担う
・テクス
工学面から人類生存を支える役割を持つ
・カミラ
宇宙での生活と繁栄を支える存在
・イザベル
人類の未来に関わる選択を背負う一人
人類が逃げ込む最後の場所
月の崩壊が引き起こす〈ハード・レイン〉は、地球文明を完全に終わらせる災害だ。政府や科学者たちは、人類の知識や遺伝情報を残すため、国際宇宙ステーションを核にした即席の箱舟を作り上げる。時間も資源も足りない中で行われる選抜は苛烈で、誰が生き残り、誰が地球に残されるのかという現実が突きつけられる。
生き延びた先で始まる分断
宇宙に残った人類は、過酷な環境の中で生存を続けるが、やがて考え方の違いが表面化する。どうやって人類を続かせるのか、誰が決定権を持つのか。生存者たちは一枚岩ではいられず、派閥に分かれ、対立を深めていく。ここでは、地球文明が終わったあとも、人間関係と政治が消えないことがはっきり描かれる。
七人に託された未来
やがて物語は、限界まで削ぎ落とされた人類の姿へと向かう。人類を存続させるために必要なのは数ではなく、選択だという事実が突きつけられる。誰と誰を残すのか、どんな形の人類を未来に送るのか。その判断の積み重ねが、やがて想像を超えた時間とスケールの世界へとつながっていく。
この小説のポイント
天体災害という派手な導入から始まりながら、中心にあるのは人類存続のための現実的で冷酷な判断。科学、政治、倫理が絡み合い、感情だけでは決められない選択が次々と現れる。危機の描写だけでなく、その後をどう設計するかに重きが置かれているのが特徴。
たぶんこんな小説
地球が終わる瞬間よりも、そのあと人類がどう続いていくのかをじっくり見せてくる小説。読んでいると、災害SFというより、人類という仕組みを遠くから眺めている感覚になる。スケールが大きいのに、考えさせられるのはかなり現実的な話、そんな印象が残る。

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