※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
ブロークン・エンジェル
著者:リチャード・モーガン
傭兵になった男が戦争の底でとんでもない遺物を掘り当てる話
『オルタード・カーボン』から約50年後。タケシ・コヴァッチは、もはや探偵でも市民でもなく、国家が金を出す戦争に雇われた傭兵として生きている。舞台はサンクション第四惑星。反乱を起こした指導者ジョシュア・ケンプを制圧するための戦場で、コヴァッチはある秘密部隊への参加を持ちかけられる。その目的は戦争の勝敗ではなく、人類の歴史すら書き換えかねない危険な“お宝”の探索だった。戦争、諜報、裏切りが絡み合う中で、コヴァッチは再び、最悪の選択肢ばかりを突きつけられていく。
ざっくり時系列
コヴァッチが傭兵として保護国支援の戦争に参加する
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サンクション第四惑星で反乱鎮圧作戦が進行する
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秘密部隊から危険な任務への勧誘を受ける
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惑星に眠る正体不明の“お宝”の存在が明らかになる
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任務の裏にある各勢力の思惑が露わになる
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裏切りと暴力が連鎖し状況が崩壊していく
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人類全体に関わる選択を迫られる
物語の主要人物
・タケシ・コヴァッチ
保護国に雇われた傭兵。過去を引きずりながら戦場を渡り歩く
・ジョシュア・ケンプ
サンクション第四惑星で反乱を起こした指導者
・ワードーニアン部隊関係者
秘密任務を進める軍事組織のメンバー
・考古学・諜報関係者たち
“お宝”の正体に関わる人物たち
探偵をやめた先にあった戦場
前作とは違い、この物語のコヴァッチは完全に兵士だ。倫理も正義も後回しで、生き延びることと任務の達成がすべて。サンクション第四惑星の戦争は、理想や解放とは無縁で、ただの利権争いとして描かれる。その空気の中でコヴァッチは、自分が使い捨ての駒であることを承知のうえで、さらに危険な仕事へ足を踏み入れていく。
戦争の裏で進む本当の目的
反乱鎮圧の裏で動いていたのは、古代文明の遺物とも兵器ともつかない存在を掘り起こす計画だった。それは使い方次第で、人類を一段階上へ押し上げる可能性も、完全に滅ぼす可能性も持っている。各勢力はそれぞれの思惑で動き、協力関係はすぐに裏切りへと変わっていく。コヴァッチは、戦争よりもさらに信用できない世界に放り込まれる。
兵器よりも厄介なもの
物語の終盤で浮かび上がるのは、テクノロジーそのものより、それを欲しがる人間の姿だ。誰が管理するのか、誰が利用するのか、そもそも存在させていいのか。銃撃戦や作戦行動の裏で、もっと取り返しのつかない選択が積み重なっていく。コヴァッチは、その中心で、またしても「最悪だけど他よりマシな答え」を選ばされる。
この小説のポイント
前作のノワール感に、戦争小説とスパイ・スリラーの要素が濃く混ざっているのが特徴。アクションは派手だが、軸にあるのは疑念と裏切り。テクノロジーは奇抜でも、使われ方は妙に現実的で、読んでいると戦争の延長線上にこの未来があるように感じられる。
たぶんこんな小説
銃声と砂埃の中で、ひたすら嫌な予感が積み重なっていく小説。読み進めるほど状況は悪くなり、安心できる場所は一切ない。それでもページをめくらされるのは、コヴァッチがその最悪の場所から、どうやって抜け出そうとするのかを見届けたくなるから、そんな読後感が残る一冊。

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