夜はやさしってどんな話?ざっくり時系列で整理

※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。




Amazon.co.jp : 夜はやさし




夜はやさし
(Tender is the Night)

作品データ
著者:F・スコット・フィッツジェラルド
ジャンル:恋愛/社交界/心理ドラマ

きらめく海辺の楽園が、ゆっくり崩れていく話

南フランスのフレンチ・リヴィエラ。ディックとニコール・ダイバー夫妻は、別荘とパーティーと人脈に囲まれた、いかにも華やかな暮らしをしている。そこへ17歳の若い女優ローズマリーが現れて、夫婦の周りを回り始める。
でも、表のきらめきの下にはヒビがある。ニコールは精神の不調を抱え、ディックは医師としての立場と夫としての感情の間で揺れ、やがて酒に飲まれていく。海辺の「完璧なカップル」っぽさが、じわじわ形を変えていくのがこの物語の核だよ。

ざっくり時系列

南フランスの別荘で、ディックとニコールが社交の中心として暮らす

若い女優ローズマリーが近くに滞在し、ディックに惹かれていく

パーティー中、ニコールがトイレで神経衰弱に陥ったと噂が立つ

トミー・バルバンがニコールを擁護し、夫婦間の対立が決闘にまで発展

一行はリヴィエラを離れ、ローズマリーはパリで夫妻の付き添い役になる

ローズマリーがディックを誘惑するが、ディックは気持ちは認めつつ拒む

ホテルでジュールズ・ピーターソンの死体が発見され、ディックがスキャンダルの火消しをする

回想で、1917年のスイスへ。若き医師ディックが患者ニコールと出会い、手紙のやり取りが始まる

ニコールの過去の傷と治療、そしてディックが結婚を決意する経緯が明かされる

共同経営のクリニックを始めるが、ディックはローマでローズマリーと情事、警察沙汰で屈辱を味わう

酒への依存が深まり、診療も危うくなり、クリニックの株式は買収される

結婚生活は崩れ、ニコールはトミーと不倫関係へ

ニコールは離婚し、トミーと結婚する

物語の主要人物

  • リチャード・ディック・ダイバー
    将来有望な若手精神科医。妻ニコールの治療と結婚を抱えながら、次第にアルコール依存へ傾く
  • ニコール・ダイバー(旧姓ウォーレン)
    裕福な患者で、父からの性的虐待の過去を抱える。治療の中でディックと結婚し、揺れながら回復へ向かう
  • ローズマリー・ホイト
    若い女優。ディックに強く惹かれ、夫妻の世界に入り込む
  • トミー・バルバン
    ニコールを庇う男。のちにニコールと不倫関係になり、彼女の新しい相手となる
  • フランツ・グレゴロヴィウス
    スイスの精神病理学者。ディックを導き、ニコールとの関係の入口にも関わる

海辺の社交界、完璧そうに見える二人の正体

最初の空気はとにかく眩しい。南仏の別荘、仲間内のパーティー、リゾートの人間関係。ディックとニコールは、周囲から見ると「理想の夫妻」みたいに映る。
そこにローズマリーが来ることで、視線がもう一段近くなる。ローズマリーは二人に魅了されつつも、何か変だと感じ始める。ニコールの発作をめぐる噂、バルバンの擁護、マッキスコ夫妻の対立、そして決闘。きれいな海辺のはずなのに、感情の火花が砂浜で散る感じがある。

パリの夜、火消し役になるディック

リヴィエラを離れた後、舞台はパリへ。ローズマリーは夫妻の付き添い役みたいな位置に入り、ディックを誘惑する。でもディックは、感情を完全には切れずにいながら、一線は越えない。
さらにホテルで殺人事件が起きる。ローズマリーのベッドでジュールズ・ピーターソンの遺体が見つかって、彼女のキャリアが吹き飛びかねないスキャンダルになる。ここでディックは、医師というより「場を守る人」みたいに動いて、遺体を運び出して関係を隠す。彼の手際の良さが、逆に危うさの前触れにも見えてくる。

回想で明かされる結婚の始まりと、崩壊のスイッチ

物語は回想に入って、1917年のスイスへ飛ぶ。ディックは若い医師としてフランツを訪ね、そこで患者ニコールと出会う。ニコールは父からの性的虐待によって精神神経症を患っていて、ディックとの手紙のやり取りが治療に良いと判断され、二人の距離が縮む。
治療が進むほど、ニコールはディックに強く依存し、ディックは彼女を救うことに意味を見出しすぎていく。やがて結婚、クリニック共同経営、そしてローマでのローズマリーとの短い情事と警察沙汰。公然の屈辱を境に、ディックの酒への依存が濃くなっていき、仕事も家庭も崩れる方向へ加速する。
最後は、ニコールがディックから距離を取り、トミーと不倫関係へ。離婚し、ニコールはトミーと結婚する。

この小説のポイント

海辺の社交界のきらめきと、精神の不調や依存が同じ画面に並ぶところ
視点人物のローズマリーが、華やかさの異物感を先に嗅ぎ取っていく流れ
回想で「なぜ結婚したのか」が明かされ、現在の崩れ方がより切実に見える構造
医師としての役割、夫としての感情、周囲の期待がディックをすり減らしていく手触り

たぶんこんな小説

リヴィエラの陽射し、パーティーの笑い声、ホテルの廊下の気配、そういう眩しい場面があるのに、読んでいるうちに夜の影が伸びてくる感じの作品。派手な事件が起きても、いちばん痛いのは「関係が少しずつズレて戻らない」ところで、そこをしつこいくらい丁寧に追ってくる。タイトル通り、夜は優しい顔もするけど、その優しさが救いとは限らない…みたいな余韻が残るよ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました