※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
ラスト・タイクーン
(The Last Tycoon/The Love of the Last Tycoon)
作品データ
著者:F・スコット・フィッツジェラルド
ジャンル:未完長編小説/ハリウッド小説
ハリウッドの頂点に立つ男が、恋と権力と良心に追い詰められていく話
1930年代ハリウッド。映画スタジオを事実上支配するプロデューサー、モンロー・スターは、才能と仕事への執念で頂点に立った男だった。亡き妻の面影を追うように出会ったキャスリーンとの恋、スタジオ内の政治闘争、盟友であり敵でもあるパット・ブレイディとの対立。そのすべてが絡み合い、スターは成功者でありながら、少しずつ孤独と破滅へ向かっていく。
ざっくり時系列
セシリアが飛行機でロサンゼルスへ向かう
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途中で知人の作家シュワルツが自殺する
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メッセージがモンロー・スター宛てだと判明
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スタジオで地震が起こり、水没騒ぎになる
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スターが亡き妻に似た女性キャスリーンに出会う
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スターとキャスリーンが関係を持つ
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キャスリーンが別の男性と結婚を選ぶ
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スターとブレイディの対立が激化する
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スターが報復を決断し、破局的な結末へ向かう
物語の主要人物
・モンロー・スター
ハリウッドの映画プロデューサー。スタジオの実権を握る存在。
・セシリア・ブレイディ
語り手。ブレイディの娘で、スターに想いを寄せている。
・パット・ブレイディ
映画プロデューサー。スターのビジネス上のライバル。
・キャスリーン・ムーア
スターが恋に落ちる女性。亡き妻に似た面影を持つ。
・ミンナ・デイビス
スターの亡き妻。彼の行動の基準となる存在。
ハリウッドという巨大な機械の中で始まる
物語は、セシリアの視点から語られることで、華やかなハリウッドの裏側が少し距離を置いて描かれる。スタジオは夢を作る場所でありながら、同時に権力と金と計算が支配する世界で、スターはその中心にいる。
亡き妻の影を追う恋と、仕事への執念
地震による混乱の中で見た女性の姿が、スターを再び恋へと引き戻す。キャスリーンとの関係は、癒しであると同時に、彼の立場や判断を揺るがすものになる。仕事一筋で生きてきた男が、感情によって不安定になっていく様子が描かれる。
権力闘争の果てに訪れる破局
ブレイディとの対立は、ビジネスの域を越えて個人的な復讐へと変わっていく。スターは自分が築いてきた世界を守ろうとするが、その選択は取り返しのつかない結果を招く。物語は未完のまま、強い不安と余韻を残して終わる。
この小説のポイント
ハリウッド黄金期を舞台に、成功者の孤独と脆さが描かれている。才能と理想を持ちながらも、時代と権力に飲み込まれていく姿は、フィッツジェラルド自身の人生とも重なって見える構成になっている。
たぶんこんな小説
きらびやかな世界の話なのに、ずっと切なさがつきまとう。完成していないからこそ、スターの行き先を読者が想像し続けることになる。夢の工場の裏で、人が静かに壊れていく気配が残る一冊。

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