※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
ベンジャミン・バトン 数奇な人生
著者:F・スコット・フィッツジェラルド
老人として生まれ、人生を逆向きに歩いてしまった男の話
ベンジャミン・バトンは、生まれた瞬間から見た目が老人だった。年を重ねるごとに若返っていくという、どう考えても周囲と噛み合わない人生を生きることになる。
社会の常識からはみ出した存在として扱われながらも、彼は恋をし、仕事をし、時間の流れの中で喜びと喪失を繰り返していく。前に進んでいるはずなのに、周囲とは逆方向へ進んでしまう、そのズレこそがこの物語の核心になっている。
ざっくり時系列
老人の姿をした赤ん坊としてベンジャミンが誕生する
↓
成長するにつれて、少しずつ若返っていくことが明らかになる
↓
周囲の視線や常識と折り合いをつけながら社会に出る
↓
恋愛や仕事を経験し、普通の人生に近づこうとする
↓
外見と年齢のズレが、愛する人との関係に影を落とす
↓
ますます若返り、やがて人生の終わりへ向かっていく
物語の主要人物
・ベンジャミン・バトン
老人の姿で生まれ、年齢と逆行する人生を歩む主人公。
・ベンジャミンの家族
常識外れの存在として生まれた彼を受け入れ、支える人々。
・ベンジャミンが出会う女性
人生のある時期に深く関わり、時間の残酷さを際立たせる存在。
生まれた瞬間から、時間に裏切られている人生
赤ん坊なのに老人として扱われるという出発点から、ベンジャミンの人生は歪んでいる。
体は老いているのに心は幼く、やがて体が若返る頃には、精神年齢とのズレが別の苦しみを生む。時間は誰にとっても平等なはずなのに、彼にだけは全く違う顔を見せる。
若返るほどに、普通の幸せから遠ざかる
若くなっていくことで、ベンジャミンは一時的に「普通の人生」に近づく。恋をし、未来を思い描く時間も訪れる。
けれどその均衡は長く続かない。相手は年を取り、自分は逆に若くなっていく。愛するほどに、同じ場所に立てない現実がはっきりしていく。
最後にたどり着く、静かな終わり方
物語の終盤、ベンジャミンは社会的な役割や記憶、関係性を少しずつ手放していく。
人生が前に進むものだという前提そのものが崩れたとき、人は何をもって生きたと言えるのか。そんな問いが、派手さのない形で置かれていく。
この小説のポイント
・時間の流れを逆転させた設定そのものがテーマになっている
・人生の段階と感情のズレが丁寧に描かれている
・幸福な瞬間ほど、後から輪郭が曖昧になる感覚
・人生を「一直線」で考えることへの疑問
たぶんこんな小説
夢だったのか現実だったのか、あとから振り返ると境目がぼやけるような読後感。
人生は前に進んでいるつもりでも、記憶の中では逆再生されているのかもしれない、そんな気分を静かに残す物語。

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