※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
美しく呪われし者
(The Beautiful and Damned)
作品データ
著者:F・スコット・フィッツジェラルド
ジャンル:海外文学/アメリカ文学/ジャズ・エイジ小説
若くて美しくて何でも手に入るはずだった二人が、遊び続けて全部失っていく話
ニューヨークの華やかな社交界で、才能も美貌も若さもそろえた夫婦が、
「今が楽しければいい」を合言葉に生きていく。
アンソニーとグロリアは、将来は莫大な遺産が転がり込むと信じ、
働くことも我慢することも後回しにして、
パーティー、浪費、酒に身を委ねていく。
気づいたときには、時間も愛情もすり減り、
二人は取り返しのつかない場所まで来てしまっている。
ざっくり時系列
アンソニー・パッチがニューヨークで暮らしている
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美しいフラッパー、グロリア・ギルバートと出会う
↓
激しい恋に落ち、勢いで結婚する
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「後悔しない人生」を誓い、遊びと浪費を続ける
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夫婦の関係が徐々にすれ違い始める
↓
アンソニーが祖父に勘当され、将来が不安定になる
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第一次世界大戦でアンソニーが軍隊に入る
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戦後、再会するが二人とも以前の輝きを失い始めている
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遺産をめぐる争いが決着し、富は手に入る
↓
しかし夫婦は精神的にも肉体的にも崩れていく
物語の主要人物
・アンソニー・パッチ
祖父の莫大な財産をあてにして生きる青年。野心がなく、享楽に流されていく。
・グロリア・ギルバート
美貌で注目を集めるフラッパー。美しさと若さに強く依存している。
・リチャード・「ディック」・キャラメル
アンソニーの友人で作家志望。二人を引き合わせた人物。
・ジョセフ・ブロックマン
映画プロデューサー。グロリアに好意を寄せる。
・ドロシー・「ドット」・レイクロフト
アンソニーが軍隊時代に関係を持つ女性。
恋と結婚は、最高のスタートだった
アンソニーとグロリアの出会いは、まさに理想的だった。
若く、美しく、周囲の視線を独占し、
二人は「生まれる前から恋に落ちていた」と思えるほどの高揚感に包まれる。
結婚も迷いなく決まり、
この時点では未来に疑いを持つ理由は何もない。
楽しさを最優先にした日々
結婚後の二人は、働くよりも遊ぶことを選ぶ。
後悔しないこと、今を楽しむことを人生のルールにして、
社交界、酒、浪費に時間を費やす。
しかし、その姿勢は少しずつ歪みを生み、
愛情は次第に疲労と苛立ちに変わっていく。
お互いを責めるわけでもなく、
ただ何かが確実に崩れていく。
富を手に入れても、元には戻らない
戦争と別離、遺産をめぐる争いを経て、
アンソニーはついに財産を手にする。
だが、その頃には彼はアルコールに依存し、
グロリアもかつての輝きを失っている。
富はあるが、若さも希望も削れ落ち、
二人の関係は空虚なものになっている。
この小説のポイント
・ジャズ・エイジの享楽的な空気が濃密に描かれる
・若さと美しさに頼った生き方の行き着く先
・愛と結婚が、時間とともに変質していく過程
たぶんこんな小説
きらびやかな夜の記憶を、
朝になって静かに思い返しているような感触。
華やかさの裏側で、
ゆっくりと失われていくものが、あとから効いてくる小説。

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