※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
誤解
(Le Malentendu)
作品データ
著者:アルベール・カミュ
ジャンル:戯曲/不条理文学
正体を名乗らなかったせいで、家族全員が破滅する話
長年海外で暮らしていた男が、善意から故郷に戻り、家族を外側から見守ろうとした結果、取り返しのつかない結末へと転がり落ちていく話。
誰かが一言、正直に話していれば防げたはずの出来事が、沈黙とすれ違いによって連鎖し、救いのない形で完結する。
ざっくり時系列
男が20年ぶりに故郷へ戻る
↓
母と妹が下宿屋を営んでいると知る
↓
正体を明かさず下宿人として泊まる
↓
妹が男を殺す決意を固める
↓
薬入りの飲み物を飲ませる
↓
男が殺され川に捨てられる
↓
正体が判明する
↓
母が自殺する
↓
妹も絶望し自殺を決意する
物語の主要人物
・ヤン
長年海外で暮らしていた男。家族に正体を明かさなかった
・マーサ
ヤンの妹。海辺での生活を夢見て殺人を続けている
・母
ヤンとマーサの母。殺人に疲れ果てている
・マリア
ヤンの妻。正直な告白を勧めていた
・老人
下宿屋で働く寡黙な男
帰郷した男の、静かな選択
ヤンは父の死をきっかけに故郷へ戻り、母と妹に金を渡そうとする。
だが彼は、すぐに名乗ることをせず、下宿人として家族を観察する道を選ぶ。
それは悪意ではなく、家族が本当に望んでいるものを知りたいという、歪んだ善意だった。
殺人を生業にする家
母と妹は、孤独で裕福な旅人を泊め、殺して金を奪うことで生きていた。
妹マーサは、海辺で暮らすための資金を求め、母はただ疲れ切っている。
ヤンの曖昧な言動は、彼女たちの疑念を深めるだけだった。
取り返しのつかない夜
マーサはヤンを危険な存在と判断し、薬入りの飲み物を飲ませる。
母はどこかで息子だと感じながらも、確信を持てず止めきれない。
こうしてヤンは殺され、金だけが残される。
朝に訪れる真実
翌朝、パスポートによって殺した男が実の息子だと判明する。
母は耐えきれず命を絶ち、マーサも完全に孤独になる。
遅れて現れた妻マリアの叫びも、誰にも届かない。
この小説のポイント
・沈黙が生む悲劇
・善意が破滅に変わる瞬間
・家族でさえ理解し合えない不条理
・言葉を発しないことの重さ
・救済が常に失敗する構造
たぶんこんな小説
誰も悪人じゃないのに、誰も救われない。
読んでいる間ずっと、「そこで名乗れ」と思い続けるのに、最後までそれは起こらない。
静かで冷たくて、読後にしばらく黙り込んでしまう、そんな戯曲。

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