死の家の記録ってどんな話?ざっくり時系列で整理

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ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。




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死の家の記録
(Записки из Мёртвого дома)

作品データ
著者:フョードル・ドストエフスキー
ジャンル:半自伝的小説/フィクション化された回想録

地獄みたいな収容所で、人間の顔がほどけたり固まったりする話

語り手は、妻殺害の罪でシベリア流刑と重労働を言い渡されたアレクサンドル・ペトローヴィチ・ゴリャンチコフ。彼は「紳士」扱いされる身分のせいで、ほとんどが農民出身の囚人たちの敵意の中に放り込まれる。最初は嫌悪と恐怖で固まっていたのに、日々の作業、体罰、奇妙な慣習、そして囚人たちの意外な優しさや誇りや才能を見ていくうちに、見え方が少しずつ変わっていく。物語は大きな事件で引っぱるというより、出来事の断片や観察や考えが積み重なって、最後に彼が「ここで見たもの」を抱えたまま釈放に向かっていく流れ。

ざっくり時系列

妻殺害の罪でシベリア流刑と10年の重労働を宣告される

収容所に入れられ、「紳士」として他の囚人の悪意にさらされる

監獄の不条理な慣習や残酷な体罰、看守の支配が日常として回り始める

囚人たちの犯罪の重さ、そして礼儀正しさや善良さが同居しているのを目撃する

少佐の暴君的な統治の下で、恐怖と軽蔑が広がる空気を知る

アキム・アキミッチらとの関わりで、収容所生活の作法や人間関係の癖を学んでいく

父親殺しの囚人、アリストフ、ガジン、オルロフ、ルカ、ペトロフなど、極端な人物像に触れる

若いタタール人アリや、陽気さを失わないイザヤ・フォミッチなど、別の光も目に入ってくる

先入観や嫌悪を少しずつほどき、囚人たちの強烈な人間性と道徳性に気づいていく

ついに釈放を迎える

物語の主要人物

・アレクサンドル・ペトローヴィチ・ゴリャンチコフ
語り手。紳士の身分で収容所に入り、見え方が変わっていく。

・少佐
気性が荒く暴君的な刑務所長。囚人たちから恐れられ軽蔑される。

・アキム・アキミッチ
囚人の貴族の一人。収容所の暮らし方を教える存在。

・父親殺しの囚人
遺産目的の父殺しとされるが、本人は否定を続ける。明るく陽気に描かれる。

・アリ
若いタタール人。優しさと強さを持ち、多くから好かれる。

・イザヤ・フォミッチ
ユダヤ人の囚人。笑われながらも尽きない陽気さを見せる。

入った瞬間から、居場所ゼロの空気が襲ってくる

ゴリャンチコフにとっての獄中生活は、いきなり過酷。理由は単純で、彼が「紳士」だから。ほぼ全員が農民出身の中で、身分の違いはそのまま敵意になって返ってくる。しかも収容所は、意味が分からない慣習や残酷な体罰が当たり前に回っていて、毎日が息苦しい。最初の彼は、ここを理解しようとする以前に、嫌悪と警戒でいっぱいいっぱいになる。

看守の支配と囚人の癖が、毎日をねじ曲げていく

少佐の存在がとにかく強烈で、ほぼ絶対的な権力が200人を押さえつけている空気がある。囚人たちは恐れつつ、心の底では軽蔑している。そんな場で、囚人同士も単純に仲間というより、疑い、見栄、強がり、立場取りが渦巻く。ゴリャンチコフは、ただ耐えるだけじゃなく、どう振る舞えば生き残るかを身体で覚えていく。

悪人の顔と、まともな顔が、同じ人の中に同居する

彼が何度も揺さぶられるのは、囚人たちが一枚岩じゃないところ。犯罪の重さや異常さにぞっとする一方で、礼儀正しさや誇りや、妙に優しい瞬間が普通に出てくる。父親殺しの囚人の「明るさ」、アリストフの腐敗と倒錯、幼児への残虐で投獄されたガジンの圧、体罰を受けても折れないオルロフの回復力、殺人を自慢話にして自分を保とうとするルカ、礼儀正しさと暴力性が同居するペトロフ。どれも極端で、でも作り話っぽくなくて、そこが怖い。

それでも人は、優しさや陽気さを手放さない瞬間がある

暗い話ばかりじゃなく、心がほどける場面もある。若いタタール人のアリは、優しさとストイックさを保ったまま生きていて、説明のつかない強さとして語られる。イザヤ・フォミッチは、笑われながらも陽気さが尽きなくて、蒸し風呂の場面みたいに、地獄みたいな混沌の中でさえ「勢い」で空気をひっくり返す。こういう瞬間があるから、ゴリャンチコフの目も少しずつ変わっていく。

釈放の前にたどり着くのは、同情だけでも否定でもない地点

この作品は、囚人たちの窮状に同情しつつ、同時に勇気や活力や創意工夫や才能にも目を向けていく。そして、体罰や不条理な慣習を含んだ監獄の存在そのものが、囚人にとってもロシアにとっても悲劇的な事実だ、という結論に寄っていく。ゴリャンチコフは、先入観や嫌悪を乗り越えて、強烈な人間性と道徳性の別の形を見つけ、釈放を迎える。

この小説のポイント

・大きな筋書きで引っぱるより、観察、断片的な出来事、考えの積み重ねで進む
・「紳士」である語り手が、敵意の中で視界を作り直していく過程が芯になっている
・看守の権力、体罰、慣習の不条理が、収容所の空気として具体的に描かれる
・極悪さと礼儀正しさ、優しさと暴力性が同居する人物像が強い

たぶんこんな小説

読んでると、収容所の日々が目の前に置かれて、そこにいる人たちの声や癖がじわじわ染みてくる感じがある。派手な山場より、ひとつひとつの場面があとから効いてくるタイプ。最後に残るのは「人間って何でできてるんだろう」みたいな、重いのに目をそらしにくい問い。

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