※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
伯父様の夢
(Дядюшкин сон)
作品データ
著者:フョードル・ドストエフスキー
ジャンル:風刺喜劇/人間コメディ
田舎町で、結婚をめぐる大騒動が起きる話
舞台はモルダソヴォ市。やり手で行動力が強いマリヤ・アレクサンドロヴナは、23歳の娘ジナイダを「もっといい結婚」に乗せたい。
ところがジナイダは、昔から想いを残す貧しい地方教師が忘れられない。町にろくな縁談もない。そこで母が狙いを定めるのが、突然ふらっと現れた超年配のK公爵。噂では老年性の衰えもあるらしく、見た目もかなり危うい。
母はひらめく。娘を公爵と結婚させれば、将来は金も自由も手に入る。ここから、町全体を巻き込む作戦とドタバタが始まる。
ざっくり時系列
モルダソヴォで、母マリヤは娘ジナイダの結婚相手に困っている
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ジナイダは貧しい地方教師を想い続け、町の縁談を拒みがち
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K公爵がモスカレワ家に立ち寄り、母が「公爵と結婚させる」計画を思いつく
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ジナイダは猛反発するが、母は「使命」だと言い含めて押し切ろうとする
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母が周到に場を作り、酒とジナイダの歌で公爵を気分よくさせて婚約承諾まで持っていく
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翌朝、公爵はほとんど覚えておらず、パヴェルが「叔父の夢だった」と話をねじ曲げて混乱
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嘘が露見し、ジナイダは罪を認める
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公爵はジナイダの誠実さに心を動かされ、彼女を称える
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公爵は衝撃で体調を崩し、3日後にホテルで死亡
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パヴェルは再度ジナイダに迫るが拒絶され、サンクトペテルブルクへ去る
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母娘は財産を売って町を去り、数年後に遠い国の舞踏会で再会が示される
物語の主要人物
- マリヤ・アレクサンドロヴナ・モスカレワ
娘の結婚で人生を動かそうとする行動派。作戦の司令塔 - ジナイダ
23歳の娘。母の計画に振り回されつつ、自分の気持ちと誠実さを貫こうとする - K公爵
年配の貴族。衰えが噂され、母の計画の標的にされる - パヴェル・アレクサンドロヴィチ・モズグリャコフ
ジナイダに言い寄る男。騒動の中で立ち回り、最後は去る - 貧しい地方教師
ジナイダが今も想いを残す相手。結婚話の影にずっといる存在
母の作戦、娘の抵抗、そして公爵の一晩
この話の面白さは、母マリヤの押しの強さがほぼエンジンになってるところ。K公爵を見た瞬間に、勝ち筋を計算して突っ走る。
ジナイダは最初は全力で拒否するけど、母は「結婚したら夫の慈悲の姉妹として尽くせる」「死後は裕福で自由な王女になれる」みたいに、道徳と未来図をセットで並べて説得する。ここ、優しさっぽい言葉が逆に圧力になってて苦い。
そして母は場を整える。酒、歌声、雰囲気。公爵がゆるんだ瞬間に婚約まで取り付ける。小さな町の社交と噂が、勝手に背中を押してくる感じもある。
翌朝に崩れる計画と、ジナイダの告白
でも翌朝、公爵は「ほぼ覚えてない」。ここで一気に空気が変わる。
パヴェルが「叔父は夢で自分の結婚式を予感した」みたいに言って、話を夢オチ方向にねじ曲げて混乱が広がる。作戦が雑に崩れていくのが、笑えるのに怖い。
嘘がバレた後、ジナイダは正直に罪を認める。そこで公爵が、彼女の誠実さに心を打たれるっていう流れが、ただのドタバタで終わらないポイント。騙されて怒るんじゃなく、誠実さに反応するのが切ない。
結末は急で、後味はじわっと残る
騒動はK公爵にとって大きな衝撃になり、3日後にホテルで亡くなる。パヴェルはまた言い寄るけどジナイダは拒絶。母娘は財産を売って町を去る。
そして数年後、遠い国の舞踏会で再会する、っていう締め方で、人生が変な形で続いていく余韻が残る。
この小説のポイント
小さな町の噂と社交が、結婚をゲームみたいにしてしまう感じ
母の「善意っぽい圧」と、娘の「誠実さ」のぶつかり方
一晩の勢いで決まった話が、翌朝には崩れる怖さ
笑える場面が多いのに、人の尊厳とか孤独がチラつくバランス
たぶんこんな小説
ドストエフスキーの重い長編とは別の顔で、田舎の人間関係をニヤニヤしながら眺めてたら、急に胸がチクっとするタイプ。母の策略は滑稽なんだけど、娘が正直に頭を下げるところとか、公爵の反応とか、そこだけ妙に真面目で静か。短いのに、意外と心に残るやつだよ。

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