※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
二重人格
(Двойник)
作品データ
著者:フョードル・ドストエフスキー
ジャンル:長編小説/心理・社会小説
仕事も社交も空回りしてた男の前に、上位互換の自分が現れて全部持っていく話
サンクトペテルブルクの下級官僚ヤコフ・ペトロヴィチ・ゴリャードキンは、出世したいのに人付き合いが壊滅的で、頭の中もずっとザワザワしてる。主治医のルーテンスピッツ医師から「楽しい仲間でも作れ」と言われ、社交に踏み出そうとして盛大にやらかす。そして吹雪の夜、目の前に現れる自分そっくりの男。最初は味方っぽいのに、そいつは魅力も社交性も備えた“ゴリャードキン・ジュニア”で、職場も評判も人生も、少しずつ奪っていく。
ざっくり時系列
ゴリャードキンが医師から正気を心配される
↓
「楽しい仲間」を作れと言われ、社交に挑戦する
↓
招待されていない誕生日パーティーに突撃する
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失礼の連続でパーティーから追い出される
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吹雪の帰り道で、自分と瓜二つの男に出会う
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分身と友人っぽい関係になる
↓
分身が職場で人気者になり、立場を侵食し始める
↓
敵対が激化し、ゴリャードキンは追い詰められる
↓
分身が増殖して見えるほど精神が崩れる
↓
ルーテンスピッツ医師により精神病院へ送られる
物語の主要人物
・ヤコフ・ペトロヴィチ・ゴリャードキン
下級官僚。出世願望と不安が強く、社交がうまくいかない。
・ゴリャードキン・ジュニア
ゴリャードキンと瓜二つの男。魅力と社交性で周囲を掌握する。
・ルーテンスピッツ医師
ゴリャードキンの主治医。彼の正気を危惧し、治療に関わる。
・クララ・オルスフィエヴナ
誕生日パーティーの中心人物となる女性。
社交の地雷原に突っ込んで始まる
ゴリャードキンは、医師にまで危ないと言われるくらい、言動がギリギリになってる。そこで「楽しい仲間」って処方を真に受けて、招待されてもいないクララの誕生日パーティーへ行ってしまう。ここがもう、読んでて胃がキュッとなるやつで、失礼が重なって追い出されるまでが一気に転がる。
吹雪の夜に現れる、笑える自分
追い出された帰り道、吹雪の中で出会う“もう一人の自分”。最初は仲間っぽく見えるのに、こいつが厄介で、ゴリャードキン本人が欲しかったものを全部持ってる。口がうまい、感じがいい、要領がいい、社交的。職場でもウケが良くて、ゴリャードキンはどんどん居場所を失っていく。
分身が増えていく終盤で、完全に壊れる
ジュニアとの関係は、友情っぽいところから敵対へ変わっていく。最後には、分身が多数見えるようになって、現実の輪郭そのものが崩れていく。締めは容赦なくて、ルーテンスピッツ医師に連れられて精神病院へ。ここまで来ると、社会に追い詰められたのか、自分に追い詰められたのか、その境目が溶けていく感じが怖い。
この小説のポイント
出世したいのに社交が無理、周囲の目が怖い、でもプライドはある、っていう矛盾がずっと燃料になってる。分身は単なる怪談っぽさじゃなくて、社会の空気と本人の不安が合体して“形になったもの”みたいに読める。あと、ゴーゴリっぽいペテルブルク感の中で、ドストエフスキーが心理の方へ踏み込んでいく手触りがはっきり出る。
たぶんこんな小説
笑える場面もあるのに、笑った直後にゾッとするタイプ。読んでるうちに、ジュニアが怖いのか、ゴリャードキン自身が怖いのか、わからなくなってくる。終わったあともしばらく頭の中が吹雪っぽいまま残る小説。

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