※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
揺籃の星
著者:ジェイムズ・P・ホーガン
地球の常識が音を立てて崩れて、逃げ道は宇宙にしかなくなる話
「地球はかつて土星の衛星だった」という、とんでもない惑星理論が現実味を帯びていく未来。太陽系は安定しているという前提が崩れ、小惑星アテナが彗星となって地球へ迫る。科学、政治、パニックが同時進行する中で、人類が生き延びるための選択肢は思った以上に少ないことが明らかになっていく。
ざっくり時系列
宇宙開発が進んだ未来社会が描かれる
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土星の衛星に移住したクロニア人が登場する
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クロニアの科学者が非常識な惑星理論を提示する
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小惑星アテナが彗星化し、地球接近が現実の脅威になる
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通信障害や異常現象が地球で多発する
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地球脱出計画が浮上し、キーンが要員に選ばれる
物語の主要人物
・キーン
原子力エンジニア。クロニア人から信頼され、脱出計画の要となる
・クロニア人
かつて地球から移住し、土星の衛星で理想社会を築いた人々
・地球の科学者たち
従来の惑星理論に固執し、クロニアの説に反発する
地球は安定している、という前提が壊される
クロニアの科学者たちが地球を訪れ、「太陽系は何十億年も同じ状態を保ってきたわけではない」と主張する。彼らの理論は地球の科学者にとって受け入れがたいが、次々と起こる異常現象が、その説を裏づける形で現実を侵食していく。
彗星アテナと、広がっていく地球の混乱
木星から生まれた小惑星アテナは彗星となり、地球へ向かってくる。通信障害、異常なオーロラ、社会不安。パニックはじわじわと拡大し、秩序だった対応が難しくなっていく。科学的議論と現実の危機が、同時に進行する状況が続く。
生き延びるための選択が、個人に委ねられる
地球の未来が危うくなる中、希望をつなぐ場所として浮上するのがクロニアだ。そこへ行くための唯一の手段は、軌道上のシャトルに乗り込むこと。その要員として指名されたキーンは、多くの命や文化が失われていく現実を前に、重い決断を迫られる。
この小説のポイント
大胆な惑星理論を軸に、ハードSF的な思考実験とパニックものの緊張感を同時に走らせているところが大きな特徴。科学の仮説が、そのまま人類の生存問題に直結していく構成が強烈。
たぶんこんな小説
読み始めると「もし本当だったら?」が止まらなくなるタイプのSF。理屈っぽさと危機感が並走していて、世界の足元が少しずつ崩れていく感じがずっと続く。続きが気になって、自然と下巻に手が伸びる空気をまとっている。

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