※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
偶然世界
著者:フィリップ・K・ディック
世界のトップが「くじ」で決まる社会で、生き延びようとする話
九惑星系では、権力の頂点に立つ者ですら自分の意思では地位を保てない。最高権力者ヴェリックは、「公共的偶然発生装置」が生み出すランダムな結果によって、ある日突然失脚する。
代わりに選ばれたのは、社会的地位を持たない無級者カートライト。彼はボトルのくじ引きという、あまりにも偶然的な方法で、六十億人の中から最高権力者に指名されてしまう。しかし、その栄光は長く続かない。数時間後、今度は同じく偶然によって選ばれた刺客が、彼の命を狙い始める。
ざっくり時系列
九惑星系で偶然による政治制度が機能している
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最高権力者ヴェリックが偶然装置により失脚する
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無級者カートライトがくじ引きで指名される
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一介の市民が突然、最高権力者になる
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権力の仕組みを理解する間もなく時間が過ぎる
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指名大会によって刺客が選ばれる
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カートライトが命を狙われる立場になる
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逃走と対処を迫られる状況に追い込まれる
物語の主要人物
・カートライト
無級者。偶然によって最高権力者に選ばれる。
・ヴェリック
前任の最高権力者。偶然の結果で地位を失う。
・刺客
指名大会で選ばれた存在。カートライトを狙う。
偶然がすべてを決める政治システム
この世界では、選挙や実力ではなく「偶然」が社会の中枢を動かしている。誰が支配者になるのか、誰が排除されるのかは、機械やくじの結果次第だ。
その仕組みは一見すると平等に見えるが、実際には誰も責任を取らず、誰も未来を予測できない。カートライトは、その矛盾のど真ん中に放り込まれる。
権力と同時に与えられる標的という立場
最高権力者になることは、同時に「次に排除される候補」になることでもある。
刺客さえも偶然によって選ばれるため、誰が敵なのかも分からない。カートライトは守られているようで、実は常に危険にさらされている。その不安定さが、物語全体に張りついた緊張感を生んでいる。
偶然に支配された世界での選択
逃げるのか、受け入れるのか、抗うのか。
ディックは、カートライトの行動を通して、「すべてが偶然で決まる世界で、人はどう行動するのか」を描いていく。合理性や計画が通用しない状況で、残るのは個人の判断と覚悟だけだ。
この小説のポイント
・偶然を制度化した社会設定
・権力と危険が同時に与えられる構造
・短時間で立場が激変する主人公
・初期ディックらしいアイデア重視の展開
たぶんこんな小説
設定を聞くだけで少し笑えて、読み進めるとだんだん怖くなる。
理不尽なのに、どこか現実の仕組みを連想させる感触がある。
読み終えたあと、「本当に公平って何なんだろう」と考えが残る一冊。

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