※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
ザップ・ガン
著者:フィリップ・K・ディック
最強兵器を作ってるフリだけしてた男たちが、本気を出す話
東西両陣営には、それぞれ天才的な「兵器デザイナー」がいることになっている。毎日のように恐ろしげな新兵器を発表し、世界を威圧している……はずだった。でも実は、その兵器には殺傷能力がない。ただのハリボテ。互いに本気で戦争をする気なんてなかったからだ。ところが、エイリアンの襲来という本物の危機が現れ、二人は初めて「本当に使える兵器」を作る羽目になる。
ざっくり時系列
東西両陣営に兵器デザイナーが存在する
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発表される兵器は見た目だけで実は無害
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両陣営は暗黙の了解でハッタリ合戦を続けている
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地球にエイリアン襲来の危機が迫る
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これまでの兵器が役に立たないことが判明
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敵同士だった二人が協力することになる
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本当に機能する究極兵器の開発に取り組む
物語の主要人物
・東側の兵器デザイナー
見た目重視の兵器を作り続けてきた男
・西側の兵器デザイナー
同じくハッタリ兵器を担当してきた対抗者
・エイリアン
地球に迫る外部からの脅威
ハリボテ兵器で成り立つ奇妙な均衡
この世界の戦争は、実は真剣勝負じゃない。恐ろしそうな兵器を作っては発表し、相手を牽制する。でも誰も本気で使う気はない。撃てば破綻するからだ。そのおかしな均衡が、妙に平和を保っている。ディックはこの時点ですでに、軍事や抑止の仕組みを軽くひっくり返してくる。
嘘が通用しない本物の危機
そこへ現れるエイリアンは、空気を読まない。本当に地球を滅ぼしに来る存在で、ハッタリ兵器は一切通じない。今まで「フリ」だけで済んでいた仕事が、急に現実になる。この瞬間から、物語は一気に緊張感を帯びる。
敵同士が手を組む理由
東西のデザイナーは、思想も立場も違う。でも共通しているのは「今まで逃げてきた」という事実だ。逃げ場のない状況で、二人は初めて同じ方向を見る。ここで描かれるのは、英雄的な団結というより、追い詰められた技術者たちの必死さだ。
この小説のポイント
・兵器開発が実はハッタリだったという設定
・冷戦構造を皮肉たっぷりに描いている
・敵味方の境界が一気に崩れる展開
・シリアスとブラックユーモアの混ざり方
たぶんこんな小説
笑える設定なのに、読んでいるとだんだん笑えなくなってくるタイプ。嘘と建前で回っていた世界が、本物の危機で一気に崩れる感覚がクセになる。軽快だけど、読み終わると「今の世界も似たようなものかも」と頭の片隅に残る一冊。

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