※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
五番目のサリー
著者:ダニエル・キイス
平凡な女性の中に、四人の別人格が生きていた話
ニューヨークでウエイトレスとして働くサリー・ポーターは、一見するとごく普通の女性。ただ彼女には、突然記憶が抜け落ちるという深刻な問題があった。そのせいで仕事も結婚も続かず、子供たちとも離れて暮らしている。
やがて明らかになるのは、サリーの心の中に四つの人格が存在しているという事実。彼女は耐えきれない出来事に直面すると、無意識に別の人格へ切り替わってしまう。治療を通して、五重人格という状態と向き合う中で、サリー自身の過去と心の傷が少しずつ浮かび上がっていく。
ざっくり時系列
ニューヨークで働くサリーが、度重なる記憶喪失に悩んでいる
↓
仕事や結婚がうまくいかず、子供たちとも離れて暮らす
↓
ある事件をきっかけに、精神科医の治療を受けることになる
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サリーの中に四つの別人格が存在することが判明する
↓
治療を通じて、それぞれの人格が現れる理由が見えてくる
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サリー自身が、自分の心と向き合う段階へ進んでいく
物語の主要人物
・サリー・ポーター
五重人格を抱える女性。普段は地味で控えめな性格。
・デリー
ブロンドで青い目をした楽天的な人格。
・ノラ
長い黒髪を持つ知的な画家の人格。
・ベラ
赤毛で歌やダンスが得意な女優志望の人格。
・ジンクス
男性を強く憎む、乱暴で攻撃的な人格。
・ロジャー
サリーの治療を担当する精神科医。
記憶が抜け落ちる日常の裏側
サリーは、自分が何をしたのか分からない時間を何度も経験する。気づけば職を失い、人間関係も壊れている。その理由を、彼女自身は理解できない。
読者は、治療の過程を通して、サリーの中で何が起きているのかを少しずつ知ることになる。
現れる四人の人格、それぞれの役割
四つの人格は、単なる別キャラではなく、サリーが生き延びるために必要だった存在として描かれる。
明るさ、知性、表現力、怒り。どれもサリーが直接引き受けられなかった感情や役割を担っていることが、徐々に見えてくる。
五番目の人格として生きるということ
物語が進むにつれ、治療の焦点は「人格を消すこと」ではなく、「どう統合し、どう生きるか」へ移っていく。
五番目のサリーとは、これまで分断されていた心を引き受ける存在として浮かび上がってくる。
この小説のポイント
・多重人格というテーマを、物語として丁寧に描いている
・人格ごとの役割がはっきりしていて理解しやすい
・治療の過程が物語の軸になっている
・心の防衛として人格が生まれる構造が見えてくる
たぶんこんな小説
静かに進むけれど、読み進めるほどに人の心の複雑さが伝わってくる話。
特別な事件よりも、ひとりの人間が自分自身を理解していく過程が強く印象に残る一冊。

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