忘れられた巨人ってどんな話?ざっくり時系列で整理

※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。




Amazon.co.jp : 忘れられた巨人




忘れられた巨人
(The Buried Giant)

作品データ
著者:カズオ・イシグロ
ジャンル:ファンタジー/文学

記憶を奪う霧の国で、老夫婦が忘れていた真実に辿り着いてしまう話

アーサー王亡き後のイングランドでは、人々が長期の記憶を保てない「霧」に覆われている。老夫婦アクセルとベアトリスもその例外ではないが、かつて息子がいたという確信だけは残っていた。二人は息子を探す旅に出て、サクソン人の戦士ウィスタン、少年エドウィン、老騎士ゴーウェインと出会い、やがて霧の正体が過去の虐殺を隠すためのものだと知る。霧が消えれば平和も消えると分かっていながら、それでも記憶は取り戻され、老夫婦は息子の死と、自分たちの愛が試される最後の場面へ向かう。

ざっくり時系列

霧に覆われた村でアクセルとベアトリスが暮らす

息子がいた記憶を頼りに旅に出る

サクソン人の村で少年エドウィンが襲われる

戦士ウィスタンがオーガを倒し、エドウィンを救出

修道院へ向かい、老騎士ゴーウェインと出会う

霧の原因が雌竜クエリグだと示唆される

過去にアーサー王が虐殺を行い、それを隠すため霧を使ったことが明らかになる

ウィスタンがゴーウェインを倒し、クエリグを殺す

霧が消え、人々の記憶が戻り始める

アクセルとベアトリスは息子が疫病で亡くなっていたことを思い出す

渡し守の島で、二人の愛が試される

物語の主要人物

・アクセル
ブリトン人の老夫。霧の中でも妻への思いを失わない

・ベアトリス
アクセルの妻。病を抱えながらも旅を続ける

・ウィスタン
サクソン人の戦士。竜を倒す使命を負っている

・エドウィン
オーガに噛まれた少年。物語の鍵となる存在

・サー・ゴーウェイン
アーサー王の甥。霧を守る役目を担っていた老騎士

忘却が守ってきた、かろうじての平和

この世界では、争いの記憶そのものが消されている。だからサクソン人とブリトン人は共存できていた。霧は優しさでもあり、残酷さでもある。誰も本当の理由を覚えていないから、怒りも復讐も続かない。その代わり、愛や喪失もぼやけてしまっている。

竜を倒すという行為が、世界を壊す

ウィスタンがクエリグを殺す理由は正義だけじゃない。記憶を取り戻すことで、過去の虐殺と向き合わせるためでもある。霧が消えた瞬間、平和は終わり、新しい戦争の芽が生まれる。それでも彼は「埋もれていた巨人は、いつか必ず目覚める」と言い切る。

最後に残るのは、愛だけかもしれない

霧が晴れ、息子の死を思い出したアクセルとベアトリスは、渡し守に出会う。死後の島で一緒にいられるかどうかは、二人の愛が本物かどうかにかかっている。結末は静かで、はっきりしない。でも、その曖昧さこそが、この物語の余韻になっている。

この小説のポイント

・記憶を失うことで成り立つ平和という皮肉
・ファンタジーを使って描かれる集団的トラウマ
・英雄譚ではなく、老いた人間の視点で進む物語
・「思い出すこと」が必ずしも救いにならない構造

たぶんこんな小説

派手な冒険や戦いを期待すると肩透かしだけど、静かに心に沈んでくるタイプ。読み終わったあと、「忘れること」と「許すこと」は同じなのか、ずっと考え続ける感じが残る。優しくて、怖くて、やけに現実的なファンタジー。

コメント

タイトルとURLをコピーしました