わたしを離さないでってどんな話?ざっくり時系列で整理

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ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。




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わたしを離さないで
(Never Let Me Go)

作品データ
著者:カズオ・イシグロ
ジャンル:SF/ディストピア/青春小説

優しい思い出を抱えたまま、静かに役目へ向かっていく子どもたちの話

エリート寄宿学校で育った子どもたちは、友情や恋を経験しながら成長する。でも彼らには最初から決められた未来があった。介護士として他人を支え、やがて自分も提供者になる。大きな反乱も脱出も起きないまま、キャシーは過去を振り返り、失われたものと手放さなかった気持ちを静かに辿っていく。

ざっくり時系列

キャシーが介護士として働いている

寄宿学校ヘイルシャムでの子ども時代を思い出す

芸術教育と外界から隔離された生活を送る

ルースとトミーと友情を深める

教師から、自分たちが臓器提供のために作られた存在だと知らされる

16歳でコテージに移り、半ば自由な生活を始める

延期の噂と「本当の愛」の話が広まる

大人になり、キャシーは介護士、友人たちはドナーになる

ルースが後悔を語り、延期を試すよう勧める

マダムとエミリー先生から、延期は存在しないと告げられる

トミーが提供を終え、キャシーも自分の順番を迎える

物語の主要人物

・キャシー・H
 語り手。介護士として長く働く女性
・トミー・D
 創造性に乏しいとされてきた少年
・ルース
 強気で主導的な少女
・エミリー先生
 ヘイルシャムの校長
・マダム
 生徒の作品を集める謎の女性

外界から切り離された学校で、何も知らずに育つ

ヘイルシャムは古い屋敷を使った寄宿学校で、生徒たちは病気を避け、創作活動に力を入れるよう教えられる。作品はマダムに回収され、理由は誰にも説明されない。キャシー、ルース、トミーは、ささいな噂や想像で空白を埋めながら、普通の子どもみたいに日々を過ごしていく。

真実が告げられても、世界は急には変わらない

ある日、教師の一人が隠されてきた事実を語る。生徒たちは臓器提供のために生まれ、将来は決まっている。衝撃的な話なのに、生活はそのまま続く。やがて彼らはコテージに移り、運転や買い物といった小さな自由を手に入れるが、逃げ道がないことも理解していく。

延期の噂と、すれ違った時間

真に愛し合っている二人は提供を遅らせられる、という噂が希望として語られる。キャシーとトミーはその可能性を信じ、失われたカセットや過去の気持ちを辿る。けれど大人になって再会したとき、二人の間には取り戻せない時間が横たわっている。

最後に明かされる、守られていた理由

マダムとエミリー先生は、ヘイルシャムがより人道的な試みだったことを語る。作品は魂の証明だったが、世論はそれを受け入れなかった。延期の制度は最初から存在しない。優しさは確かにあったが、結末を変える力はなかった。

この小説のポイント

・静かな語りで進むため、世界の異常さがじわじわ染みてくる
・芸術や記憶が、人間らしさの象徴として扱われている
・大きな抵抗がない分、選ばされなかった人生の重みが残る
・SF設定が前面に出ず、感情の揺れが中心になる

たぶんこんな小説

切ない出来事が起きているのに、全体の空気は驚くほど穏やか。子どもの頃の思い出や、誰かを大切に思った感情が、最後まで消えずに残る。読み終わると、キャシーの回想みたいに、しばらく自分の記憶を振り返りたくなる。

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