※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
アルジャーノンに花束を
(Flowers for Algernon)
作品データ
著者:ダニエル・キイス
ジャンル:SF/ヒューマンドラマ
かしこくなりたい青年が、知ることの喜びと残酷さを全部引き受ける話
知的障害を持つ青年チャーリイ・ゴードンは、誰よりも「頭がよくなりたい」と願っていた。新しい脳手術によって天才的な知能を手に入れた彼は、世界の見え方が劇的に変わっていく。だが、知ることが増えるほど、失われていくものもはっきり見えてくる。上昇と下降、その両方を一人で体験していく物語。
ざっくり時系列
知的障害を持つチャーリイがパン屋で働きながら学習クラスに通う
↓
新しい脳手術の被験者として選ばれる
↓
手術が成功し、知能が急激に上昇
↓
アルジャーノンとの実験と研究が進む
↓
天才として学問の世界に入る
↓
過去の記憶や人間関係の真実を理解する
↓
アルジャーノンに異変が起こる
↓
知能低下の欠陥に気づく
↓
チャーリイ自身も退行を始める
↓
元の知能へ戻り、施設へ向かう
物語の主要人物
・チャーリイ・ゴードン
知的障害を持つ青年。手術によって知能が大きく変化する
・アルジャーノン
同じ脳手術を受けたハツカネズミ
・アリス・キニアン
学習クラスの教師。手術を勧めた人物
・ハロルド・ニーマー
研究プロジェクトの主任教授
・ジェイ・ストラウス
脳手術を担当した医師
かしこくなりたい、ただそれだけの願い
物語は、幼い心を持ったまま大人になったチャーリイの日常から始まる。彼は人に笑われても気づかず、優しく、まっすぐで、「みんなと同じになりたい」と本気で思っている。そんな彼に持ちかけられたのが、知能を高める脳手術だった。チャーリイは迷わずそれを受け入れる。
天才になって見えてきた、過去と世界
手術後、チャーリイの知能は急激に上昇する。文章は洗練され、思考は鋭くなり、学ぶこと自体が喜びになる。しかし同時に、これまで気づかなかった事実が次々と見えてくる。職場での嘲笑、母親との関係、自分が置かれていた立場。頭が良くなるほど、心は追いつかず、孤独が深まっていく。
知能のピークと、避けられない退行
アルジャーノンに現れた異変をきっかけに、チャーリイは手術の欠陥を突き止める。知能の上昇は永続しない。やがて必ず下降する。その事実は、自分自身の未来を意味していた。退行を止める方法を探しながらも、時間は容赦なく進み、チャーリイは少しずつ元の自分へ戻っていく。
この小説のポイント
・知能の変化が文章そのものに反映される構成
・科学的進歩と人間の幸福が必ずしも一致しない描写
・優しさと残酷さが同時に存在する世界観
・知ることと幸せの関係を真正面から描いている
たぶんこんな小説
静かで、やさしくて、読んでいるうちに胸の奥がじわっと重くなる話。派手な未来や技術よりも、一人の人間の心の動きがずっと近くで感じられる。最後まで読むと、タイトルの意味がとても自然に染み込んでくる一冊。

コメント