※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
24人のビリー・ミリガン
著者:ダニエル・キイス
罪の記憶を持たない男の中に、24人が生きていた話
1977年、オハイオ州で連続レイプ事件の容疑者として逮捕された青年ビリー・ミリガン。しかし彼自身には、犯行の記憶がまったくなかった。精神鑑定の結果、彼の中には複数の人格が存在し、行為は別の人格によるものだと判明する。
調査と治療が進むにつれ、ビリーの中には実に24もの人格がいることが明らかになる。それぞれが異なる年齢、性格、国籍、役割を持ち、彼の人生と身体を交代で生きていた。物語は、事件の解明と並行して、「生きのびるために心が分かれていった過程」を追っていく。
ざっくり時系列
オハイオ州で連続レイプ事件が起きる
↓
ビリー・ミリガンが逮捕される
↓
本人に犯行の記憶がないことが判明する
↓
精神鑑定が行われる
↓
複数の別人格の存在が明らかになる
↓
人格ごとの役割や関係性が整理されていく
↓
ビリーの過去と人格誕生の背景が掘り下げられる
↓
治療が進み、回復の兆しが見え始める
↓
社会の反応や世間の視線にさらされる
物語の主要人物
・ビリー・ミリガン
逮捕された青年。複数の人格を内に抱えている。
・アーサー
理性的で統率力のある人格。
・レイゲン
攻撃的で行動力のある人格。
・アレン
社交的で人との交渉を担う人格。
・その他の人格たち
年齢、性別、国籍、知能がそれぞれ異なる存在。
事件から始まる、心の調査
物語は犯罪事件という非常に現実的な入口から始まる。しかし読み進めるうちに焦点は、「誰がやったのか」から「なぜそうなったのか」へ移っていく。
ダニエル・キイスは、本人への膨大なインタビューと関係者の証言をもとに、人格が交代する瞬間や、それぞれの人格の役割を丁寧に描き出していく。裁判や鑑定の場面は、ビリーの内面世界と外の社会がぶつかる場所として描かれる。
生きのびるために分かれた心
ビリーの人格たちは、無秩序に存在しているわけではない。それぞれが「守る」「耐える」「外と交渉する」といった役割を持ち、極限状態を生き抜くために必要とされてきた。
基本人格であるビリー自身は、連続した意識を保てず、不安定な状態に苦しみ続ける。一方で、他の人格たちはそれぞれのやり方で世界と向き合っている。その対比が、物語に独特の緊張感を生んでいる。
治療と社会の狭間で
治療によって少しずつ整理され reminding いく内面とは裏腹に、外の世界は必ずしも穏やかではない。事件性、注目度、好奇の視線。
物語は、回復の過程そのものだけでなく、「理解されること」と「裁かれること」が同時に存在する現実を描いていく。心の問題が社会に投げかけられたとき、何が起きるのかが浮かび上がってくる。
この小説のポイント
・実在の事件と人物をもとにしたノンフィクション
・人格ごとの視点を通じて構成されている
・犯罪、治療、社会反応が同時進行で描かれる
・心の仕組みを物語として理解させる構成
たぶんこんな小説
重たい題材なのに、読み進めると不思議と「人の心」に集中していく一冊。
特殊な事例を追っているはずなのに、感情や恐怖、守ろうとする力はどこか身近に感じられる。
読み終えたあと、「心ってどうやって自分を守るんだろう」と、静かに考えが残る物語。

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