※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
預言
著者:ダニエル・キイス
心を病んだ女性の記憶が、世界の狂気と直結してしまう話
舞台は9・11以後の世界。主人公は、精神を病み、施設に入院している若い女性レイヴン・スレイド。外の世界から切り離され、無力な患者として生きていた彼女の人生は、ある“記憶”をきっかけに一変する。それは、テロリストのものと思われる、預言めいた暗号だった。妄想と現実の境目が揺らぐなか、彼女の内面と世界の暴力が奇妙に共鳴しはじめる。これは陰謀を追う話であると同時に、壊れかけた心が自由を求めてもがく物語だ。
ざっくり時系列
精神疾患を抱えたレイヴンが施設で暮らしている
↓
彼女の記憶の中に奇妙な暗号があることが判明する
↓
暗号がテロリストの預言と関係している可能性が浮上する
↓
妄想と恐怖症が激しさを増していく
↓
テロと暴力、洗脳の現実が彼女の人生に侵入する
↓
公権力による監視と拘束が強まる
↓
愛してはいけない相手との関係が生まれる
↓
過去のトラウマと向き合いながら、自由を求めて動き出す
物語の主要人物
・レイヴン・スレイド
本作の主人公。精神を病みながらも、重要な記憶を抱えている女性。
・医療・捜査関係者
彼女を保護し、同時に管理・監視する立場の人々。
・テロリストたち
暗号と預言を通じて物語の背後に存在する集団。
病室から始まる不穏な違和感
物語の出発点は閉ざされた医療施設だ。レイヴンは無力な患者として扱われ、自分の言葉すら信用されない。だが彼女の中には、本人すら理解しきれていない記憶が眠っている。小さな違和感が、やがて大きな不安へと変わっていく。
暗号と妄想の境界線
テロリストの預言とされる暗号は、本物なのか、それとも彼女の妄想なのか。はっきりした線引きはされない。暴走する精神、恐怖症、洗脳。読者はレイヴンと同じ位置に立たされ、何を信じていいのか分からなくなっていく。
愛と自由を求める逃走
監視され、縛られ、正義の名の下に追い詰められていく中で、レイヴンは「自由」を強く意識するようになる。許されない関係と、心の奥に沈んだトラウマ。そのすべてを抱えたまま、彼女は飛び立てるのかどうかが物語の終盤へとつながっていく。
この小説のポイント
精神の不安定さと社会不安が重なる構成
テロと妄想が切り分けられない語り
個人の心を通して描かれる9・11以後の世界
サスペンスよりも内面描写が軸
たぶんこんな小説
派手な展開よりも、じわじわと息苦しさが積み重なっていく感触が強い。世界が狂っているのか、心が壊れているのか、その区別が曖昧なまま物語は進む。読み終える頃には、外の世界を見る目が少し変わっている、そんな静かな重さを残す一冊。

コメント