※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
愛その他の悪霊について
(Del amor y otros demonios)
作品データ
著者:ガブリエル・ガルシア=マルケス
ジャンル:長編小説/歴史・恋愛・社会小説
悪魔に取り憑かれたとされた少女と、恋に落ちてしまう司祭の話
18世紀のコロンビア。狂犬病の犬に噛まれた12歳の少女シエルバ・マリアは、病ではなく「悪魔憑き」と判断され、修道院で悪魔祓いを受けることになる。彼女を救うために派遣された司祭デラウラは、次第に彼女に強く惹かれていき、信仰・制度・愛の間で引き裂かれていく。物語は、愛が救いにも破壊にもなりうることを、残酷なまでに描いていく。
ざっくり時系列
誕生日の日に街で狂犬病の犬に噛まれる
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狂犬病流行の噂が広がる
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医師は感染を否定する
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司教が悪魔憑きと判断する
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サンタ・クララ修道院に送られる
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司祭デラウラが悪魔祓いを担当する
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二人の関係が深まっていく
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司教の命で悪魔祓いが強行される
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シエルバ・マリアが命を落とす
物語の主要人物
・シエルバ・マリア・デ・トドス・ロス・アンヘレス
12歳の少女。奴隷に育てられ、独自の文化と言葉を持つ。
・カジェターノ・デラウラ神父
悪魔祓いを任された司祭。シエルバ・マリアに惹かれていく。
・イグナシオ・デ・アルファロ・イ・ドゥエニャス
侯爵。シエルバ・マリアの父親。娘を守ろうとする。
・ベルナルダ・カブレラ
シエルバ・マリアの母親。家庭から距離を置いている。
・ドミンガ・デ・アドヴィエント
シエルバ・マリアを育てた奴隷女性。
・ドン・トリビオ・デ・カセレス・イ・ヴィルトゥデス
司教。教会の権威を象徴する存在。
狂犬病よりも恐れられたものから始まる
舞台は18世紀の港町カルタヘナ。狂犬病の流行という現実的な恐怖が広がる中で、シエルバ・マリアは病人ではなく「異端」として扱われる。彼女の髪、言葉、育ちが、周囲の人々にとって理解不能な存在として映っていく。
修道院で深まる愛と信仰のズレ
修道院での生活は過酷で、シエルバ・マリアは孤立していく。デラウラ神父だけが彼女に人として向き合い、やがて二人の関係は静かに、しかし確実に変化していく。信仰に従うべき司祭が、愛に引き寄せられていく過程が描かれる。
悪魔祓いがもたらす結末
最終的に悪魔祓いは実行され、シエルバ・マリアは衰弱していく。約束された救いは果たされず、彼女は孤独の中で命を終える。死後も伸び続ける髪は、物語の最後に強い余韻を残す。
この小説のポイント
病と信仰、愛と制度、植民地社会と個人の自由が交錯する構造が特徴的。悪魔という言葉の裏に、社会が生み出した恐怖や抑圧が重ねられている。
たぶんこんな小説
静かに進むのに、読後はずっと胸に残る。愛が救いになる瞬間と、そうならなかった時間が、同時に描かれている。読んでいる間、ずっと息をひそめてしまうような空気が漂う一冊。

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